貿易依存度の高い経済を持つ韓国には国際的孤立を甘受してまで核開発を進めるメリットはなく、核保有論に現実味はない。在韓米軍への戦術核再配備にしても実現可能性の点では同じだ。既に戦略核で十分な抑止力を持つ米軍が管理や警備に莫大なコストとリスクをかけて、韓国に戦術核を持ち込む意味はないからだ。韓国世論の反応は、北朝鮮が核兵器を持つなら対抗しなければという程度の軽い考えでしかない。残念なことだが、唯一の被爆国である日本と他国では核兵器に関する感覚はまったく違う。韓国も「その他の国」の一つなのだ。
(iStock)
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 今回の韓国ギャラップ社の調査で興味深いのは、むしろ北朝鮮に対する脅威認識の長期的低下を如実に示す設問である。

 調査では「北朝鮮が実際に戦争を起こす可能性」について聞いている。「大いにある」と答えた人は13%、「ある程度ある」が24%で、両方を合計した「ある」は37%。これに対して「まったくない」22%、「別にない」36%で、「ない」の合計は58%だった。

 「ある」37%と「ない」58%。これだけを見ると判断に迷うかもしれない。ただ過去の調査と並べると、変化を見て取れる。同社の発表資料には92年以降に行った9回の調査結果が並んでいる。

 「ない」58%というのは、今までで最も多かった金大中政権末期の2002年と同じだった。「ある」37%も、02年の33%に次いで低かった。6回目の核実験直後でも、南北首脳会談後の融和ムードが強かった時と同じ程度にしか戦争の脅威を感じていないということになる。

 冷戦終結直後だった92年の調査では「ある」が69%、「ない」24%だったから、四半世紀前と比べたら完全に逆転した。

 背景にあるのは、冷戦終結を境に韓国と北朝鮮の国力差が如実に見えてきたことだ。

 韓国と北朝鮮は朝鮮戦争休戦(53年)後に体制間競争を繰り広げてきた。ソ連や中国から大規模な支援を受けた北朝鮮の方が戦後復興は順調に進め、世界最貧国レベルだった韓国経済に差を付けた。日米から資金と技術を導入した韓国が追い上げ始めるのは60年代後半になってからで、南北の経済力が逆転したのは70年代半ばのことだ。

 冷戦期には、北朝鮮の武装ゲリラが韓国に浸透して青瓦台襲撃を図った事件(68年)や外遊中の全斗煥・韓国大統領暗殺を狙ったラングーン爆弾テロ事件(83年)、ソウル五輪妨害を狙った大韓航空機爆破事件(87年)などが続いた。北朝鮮の脅威はまさに身近なものだったと言える。