山本 文在寅政権は、それまで9年間続いた対北強行姿勢の保守政権とはちがい、大統領選期間中から北朝鮮との対話路線を打ち出した親北的・進歩的政権と位置づけられています。文在寅大統領が対話の道を切り拓くことに熱心なのはなぜでしょうか。また、このような外交政策についてどのように分析していますか。

  文在寅政権の考えでは、北朝鮮はアメリカに自らの存在を脅かされていると認識しています。だからこそ、文在寅政権は平壌に対し、韓国にそのような意志はないということを伝えようとしているのです。現に、文在寅大統領は「朝鮮半島を二度と戦場にしてはならない」という趣旨の発言を繰り返しています。

 ですが、戦争をする意志がないことを韓国の大統領が強調することは、かえって北朝鮮の好戦的態度を招きかねない。韓国が北朝鮮に対して戦争をする意志がない旨を伝えることで、翻って北朝鮮が「こちらから先に攻撃しても構わないのではないか」と考える可能性があるからです。だから、「われわれは平和を欲しているが、同時に戦争にも備えている」ということこそが、文在寅大統領の伝えるべきメッセージではないでしょうか。
武力による「統一」に懸念を示す池恩平氏=2017年8月、韓国・ソウル市内(川畑希望撮影)
武力による「統一」に懸念を示す池恩平氏=2017年8月、韓国・ソウル市内(本江希望撮影)
 山本 では、韓国は北朝鮮の脅威に対してどのような軍事的態勢で臨んでいるのでしょうか。

  軍事的態勢について語る際には、レベルを三つに分けて考える必要がある。「核の脅威」、「通常兵力の脅威」、「北朝鮮の体制崩壊」、これらに対して韓国がどのような態勢にあるかを、順を追って説明します。

 まず、「核の脅威」に対する態勢は充分とは言えません。韓国が単独で核の脅威に対応することは難しいと考えられているからです。核の脅威に対してとるべき措置は、今のところ二つ挙げられます。一つ目は、(例えばイスラエルがイラクやシリアに対して行ったように)核施設を発見した時点で先制攻撃を行い、核開発能力を無力化することです。

 ただし、これについては、韓国に自力で核施設を探索できるほどの衛星技術やインテリジェンス能力が備わっていないという問題点がある。二つ目はミサイル防衛ですが、残念ながら韓国のミサイル防衛態勢は発展途上にあります。例えば、イスラエルは高高度、中高度、低高度のいずれにおいてもミサイルの迎撃が可能ですが、韓国の場合、PAC-3のようなパトリオット・ミサイルは低高度での迎撃しかできない。だから、北朝鮮の『核の脅威』に対する韓国の対応能力は、目下のところ不完全だと言えます。

 次に、「通常兵力の脅威」については、韓国はこれを防御する能力を有しています。過去7年間、韓国軍は北朝鮮の通常兵力による攻撃に備えるように訓練されてきました。そして、われわれは北朝鮮軍による攻撃を阻止するための作戦計画を複数用意しています。

 最後の「北朝鮮の体制崩壊」についてですが、韓国は北朝鮮の体制を崩壊させるという状態までは展望できていないのです。なぜなら、韓国軍は基本的に朝鮮半島の南半分を防御することを主旨に創設された軍隊であって、38度線を北上して北朝鮮の領域を攻略するための軍隊ではないからです。