この記者の推測を事実に加えると、男性2人は、非常に政治に興味があるようにしか見えなくなります。それだけでなく、スカウトマンという職業の2人が、学力や収入が少ない「弱者」という立場に置かれている人たちに見えてきます。その結果、その弱者の若者が、現状の政治(自民党政治)に不満を持ち、立憲民主党に期待しているように見えてきます。

 確かに、この社説は、記者が見て感じた事を書いただけの文章ですから、一般の記事のようにファクトの根拠が正確に求められる事はありません。しかし、積極的に意見を述べてはいない若者が、イベントの概要説明の冒頭部分からの文章構成と記者の推測により、明確な意見を持っているように読者に見せていることには問題があります。100歩譲って文章構成は偶然だとしても、記者の臆測を文章から排除したければ、スカウトマンと思われる2人組に記者が話を聞いて取材すればよかっただけです。

(画像:iStock)
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 それをしなかったのには、ファクトチェックのしようがない状態を保ちつつ、「立憲民主党が、スカウトマンの若者に希望を託されている」という記事を書きたかっただけのように思えます。そうすれば、立憲民主党の支持者が多そうな読者に意外性とうれしさなどを感じさせる事ができ、記事の反応が良い事が容易に想像でき、動機も明快に見えてしまいます。

 そうやって、記者に対する信頼を無くした上で、改めて社説を読み返すと、スカウトマンの2人の会話も実際に起こった出来事なのか疑問に感じられてしまいます。なぜなら、「俺らのこと『草の根』ってディスりましたよ」と言う後輩は、「草の根=俺ら」という事を理解する国語力があるわけです。その能力がある人が、草の根の意味が分からないという事があるでしょうか。草の根の意味が分からない人は、「草の根から声をあげていく」という言葉を聞いても、それが「俺ら」である事も分からないのが自然なのではないでしょうか。

 また、スカウトマンが、あたかも最低時給が1500円に上昇する事に興味があるような雰囲気で文章が書かれていますが、非常に強い違和感を覚えます。なぜなら、スカウトマンという職業は、一獲千金を夢見て、稼ぎたいような若者がする職業だと思われるからです。普通のアルバイトよりも稼ぎたいとスカウトマンになる若者が、飲食やコンビニのアルバイトスタッフのように、最低時給に興味があるのでしょうか。大いに疑問です。

 さて、この記事は、ツイッターで有田芳生議員がコメントするように、朝日新聞のコアなファンには非常に受けが良い文章のようです。

(社説)政治の可能性 「そんなもん」を超えて:朝日新聞http://www.asahi.com/articles/DA3S13214074.html … 読みごたえがある政治家必読の論説です。路上の声をよく聞き取っているこの社説子は「きっとあの記者だろう」と推測してしまいました。とてもユニークです。 (有田芳生氏ツイッターより)

 私は、これに対しても、非常に強い違和感を覚えました。それは、私は放送作家やニュース番組のディレクターとして取材をしてきましたが、ここまで絵に描いたように、記事的に都合の良い事は、なかなか起こらないからです。