TwitterやFacebookなどのSNS技術が広まり、個人が自分の気持を発信しやすくなったということもあり、これまで口を閉ざし苦渋を噛み締めてきた女性たちが声をかけあい、励まし合い、この国も漸くセクハラを告発する女性が問題に公然と立ち向かえる土壌ができたといえる。映画界から始まったその告発・摘発はメディア界、政界、経済界、あらゆる分野へと波及している。「え、この人まで」と思うほどに広まり衝撃を受けるケースもある。「もう我慢はしない」「これからの子供たちのために」とそのモチベーションは様々だろうが、その勢いは留まるところがなく社会に大きな変革が訪れていることを改めて確信する昨今だ。

 アラバマ州において上院議員の補欠選挙が12月に予定されているが、その有力候補である共和党のロイ・ムーアに対しセクハラ及び未成年者(最年少は14歳の時のできごと)への過去の性的虐待暴行容疑が13人の女性から告発されている。ムーア氏本人はその告発に対し「虚言だ、民主党の罠だ」と否定。しかし、過去の記録をたどると三十代のムーア氏(現在70歳)は十代の女子がよく集まったりバイトをしている地元のショッピングモールから挙動不審を理由に、当時立ち入りが禁止されていたという事実も浮き彫りになってきている。

 民主党内でも上院司法委員を務め、その鋭い切り口で支持者も多い元コメディアン(サタデーナイトライブ出身)アル・フランケン氏もコメディアン時代の行為にセクハラがあったとして告発されてしまった。「面白いと思ってしたことだが」「私の記憶と彼女の記憶には違いがあるのだが、彼女の言い分を私は尊重する」と告発した女性の申し立てを即日真摯に受け止め、謝罪をした。

 即刻、上院議員を辞任するべきなのではと自ら打診したが、党幹部との話し合いで今すぐ辞任する必要はないということになり感謝祭休暇の終わった今日議会に戻っている。しかし、本人自ら倫理諮問委員会による本人への徹底的な尋問を求めた。告発した女性からも「辞める必要はない。謝罪をうれしく思う」と発表があった。

 その対応の差に共和党と民主党の近年のあり方が象徴されるようであるが、しかし、トランプ大統領は謝罪し即刻事態の収拾を図ったフランケン氏を指して「そら見たことか」とばかりにTwitterで非難。自分へのセクハラ・性的不適切な行為に関する十数人の女性被害者による告発も含め、ムーア氏への告発女性たちは皆嘘つきで民主党の戦略であると責任転嫁をするばかり。

 今日に至っては大統領選挙戦中には謝罪会見まで行って自らの失態を認めていた、テレビ局が収録していた卑猥な会話の音声が偽物だとまで言い出す始末。ホワイトハウス報道官のサラ・ハッカビー・サンダースによれば、選挙中は謝罪が必要だと思ったからしたが、もうすでに大統領に就任しておりようやく偽物だと弁明することができたと発表している。そういった倫理に欠ける公式発表が毎日のようにホワイトハウスから発信されているのだ。
定例の記者会見で記者に話しかけるサラ・ハッカビー・サンダース米大統領報道官
定例の記者会見で記者に話しかけるサラ・ハッカビー・サンダース米大統領報道官
 トランプ支持者もアラバマ州のムーア候補者支持者も一連のセクハラ・暴行容疑・告発についてまったく気にも留めない状態であり、大統領自身が容疑を抱える当事者であることから一向に事態が収束する様子はない。その渦中にある、共和党色濃いアラバマ州では何がなんでも共和党ということなのだろう、ムーア氏を支持する人たちが怯む様子もまったくないようだ。

 この党だと決めたが最後、候補者の素行や言動など倫理的側面はまったく関係ないということか?

 だとしたら世界の世論がどうであれ、素行に問題があれ、何が何でも共和党だからトランプを支持しご機嫌をとろうという姿勢を変えようとしない日本与党の今日の外交にも共通するところではないだろうか。