アメリカがひっくり返ってしまうほどの騒ぎになっているそういったセクハラ・性犯罪・人権侵害の告発者を非難し、まるで性犯罪を擁護するかのような姿勢を取り続けるトランプ大統領の腰ぎんちゃくとなってしまっている安倍政権。人権問題についてアメリカのどの土地よりも真剣に取り組んで来た歴史の長いサンフランシスコ。そこでサンフランシスコ議会が日本の立場や見解に対して疑問を持っているのであれば、慰安婦像への日本の感情論を無視したことだけを取り上げてサンフランシスコを一方的に責めるのはどこかおかしい。

 サンフランシスコの現市長は中国系アメリカ人である。中国人はサンフランシスコのゴールドラッシュ時代に西海岸沿岸に鉄道を敷く際の労働力として米国に多く移住している。私が移住してきた32年前でさえもサンフランシスコの70%の不動産が中国系アメリカ人が所有しているといわれていたように、中国系アメリカ人はこの土地に根をはり地道に自分たちの発言権を高めてきた。彼らは一度手にした土地・家屋は手放さない。たとえ手放すことになっても身内や親族に売り渡し、中国系民族が所有する不動産は着実に増やして来たのだ。

 韓国人も祖国韓国が英語教育、それも聞き取りだけではなく発言に非常に力を入れている中、多くの若者がアメリカに留学し、発言力を高めている。彼らの認識が正しい、正しくないにかかわらず声高々に主張したり、プロパガンダを行う人達の声が社会には浸透する。

 日系アメリカ人はといえば第二次大戦中に、祖国日本が突如起こした真珠湾攻撃の余波を浴び、ご存知のようにすべての所有物を国に没収され強制収容所へと送還された歴史がある。だから日本人からの移民者も歴史的にはたくさんこの地に根付いていたのではあるが、土地も家屋もビジネスも途中で奪われてしまいその勢力は弱くなってしまったようだ。その悲しい経緯もあるからか、日本の美徳を引き継ぐ日系アメリカ人は中国系や韓国系のアジア人とは違い、どちらかというと物静かなよきアメリカ人として社会に貢献している。

 多民族・多思想を包含するサンフランシスコの公共の場に設置されるこの慰安婦像を観て何を考えるのかは人それぞれだろう。日本軍による侵略を体験した人は苦々しい思いでその当時を思い起こす人もいるかもしれない。日本軍の優しさに触れたことを思い出す人も少なくないのかもしれない。強制収容所にいた辛かった時期を思い浮かべる人もいるかもしれない。単に人権尊重の象徴として思いを馳せる人も多いだろう。
セント・メリーズ公園展示スペースに設置された慰安婦像=2017年9月、サンフランシスコ
セント・メリーズ公園展示スペースに設置された慰安婦像=2017年9月、サンフランシスコ
 日本人の感情や理解だけでそれを観たどの民族も同じ思いを持つのではないということは理解しておくべきだと思う。
 
 この慰安婦像が日本に対して屈辱を与え反省を促すことをその主旨としているという結論を最初に出すのではなく、まずは人間としての原点に立ち戻り、性的暴力・虐待・人権侵害ということについて考えるべきなのではないかと思う。どうしても日本への挑戦状であると考えたいのであれば、現代の日本はセクハラや性的暴行を擁護する国ではないということを徹底的に示すべきではないだろうか。

 米国に進出した日本企業の日本から赴任された上司の米国人女性へのセクハラ問題、人種差別を取り上げた報道も過去には珍しくなかったように記憶している。

 日本では、今なお痴漢が満員電車にあふれ、政府に近しい人材を相手にセクハラ・暴行で訴えてもまったくメディアが問題にもしない。ちょっとした会話の中でセクハラに当たる言動をしてしまっている自分に気づかない御仁も相変わらず日本には多い。