既存メディアが進む未来とは


 ただ、ネットユーザーの中には、ネットにこそすべての正しい情報がある。マスゴミは信用できない。ネットには真実があるみたいに、本気で思い込んでいる連中がいる。困ったもんですよね。すべて同列にみえてしまうっていうところが怖いですよね。そこが、まさに既存メディアが苦戦、苦闘していることでもあります。その中から何かルールなり、作法が生まれてくる。それを作っていかなければいけないんだろうと思います。なかなか見えてこないですけど。それはひょっとして我々のような古い、オールドメディアの連中だから分からないのかもしれない。もしかしたら、物心ついたころからインターネットでずっと慣れ親しんできた人たちが、また新しいものをつくるのかなとも思います。

(瀧誠四郎撮影)
 それでも、既存メディアの将来について一つだけ言えるとしたら、これから紙の新聞ってのは必ず減っていきます。この先も減り続けると思ってます。でも、絶対になくならない。必ずどこかで止まるんですよ。逆に、日本の新聞の発行部数が異常に多すぎる。産経さんは少ない少ないって言うけど、いま160万部もあるんでしょ? ニューヨークタイムズやワシントンポストってどのくらいです? 100万部ちょっとでしょ。ニューヨークタイムズ、ワシントンポストに比べれば産経新聞ははるかに多いんです。だから1千万部なんて言っている新聞があるけど、実際はもうちょっと少ないんでしょうけど、世界規模でみると日本は異常なんですよ、あれ。

 実はこれまでが異常だった。本当に紙のものをある程度きちんと読んでくれる人のレベルって、こんなにたくさんいるわけないですから。そういう意味では減りますよ、日本中の新聞すべてが。朝日も産経もまだまだ減りますよ。でもどっかで止まるんだと思っています。ちゃんと手に取って読んでくれる良質な読者をどうやって抱えていくのか。そして、紙では読まないけれど、ネットでは読んでくれる人をどれだけ取り込むのか。理想をいえば、ネットでも重要な記事やコンテンツは課金する流れができたらもっといい。

 課金に関しては、ニューヨークタイムズも成功しているわけでしょ。日本だと日経新聞がとりあえず成功している。金儲けの部分だけはうまくいっているわけです。産経新聞だって正式名称は「産業経済新聞」なんですよね。経済ネタだけは課金をするような形とか。うまいやり方は正直分かりませんけど、あるいは産経ならではの正論なり、主張なりという部分は「お金を出して読んでください」みたいなこともできる。利益は出なくても赤字にはならないで済むようなビジネスモデルを考える。持続可能なものとしてね。いまどこの新聞社もデジタル部門はトータルとして赤字なんじゃないですか?

 今後、その赤字をどれだけ減らしていくのか、そこで利益を上げようとしても現時点ではとても無理ですから。より良いビジネスモデルを模索する時期なんだと思う。やっぱりメディアというのは、結局は読者がお金を出してでも読みたいと思う記事をどこまで出せるかに尽きる。いま、新聞を定期購読をしている人っていうのは、その多くが惰性で取っているでしょ。でも、数は減っているとはいえ、キヨスクでお金を出して買ってくれる人もいるわけです。110円を出して産経新聞を買っている人が必ずいる。そこには買った人が読みたいなと思う記事があるからですよね。個人的な意見ですが、近い将来、ネットメディアでも100円を出してでも読みたいっていう記事がもっと増えればいいなと思いますけどね。(聞き手 iRONNA編集長、白岩賢太/川畑希望)

池上彰(いけがみ・あきら)
 昭和25年、長野県生まれ。元NHK記者。平成6年から11年間「週刊こどもニュース」のお父さん役を務めた。17年にNHKを退局し、フリージャーナリストに。 東京工業大学リベラルアーツセンター教授。近著に佐藤優氏との共著『新・戦争論 僕らのインテリジェンスの磨き方』(文春新書)。