以前、インドネシアで味の素の製品の製造工程で豚由来の酵素が使われていたことが明らかになって、大問題になったことがあった。最終製品には含まれないから問題ないと、味の素は思ったようだが、消費者はショックを受けた。そういう判断ができるのは、イスラム法学者である。味の素が権威あるイスラム法学者を顧問とし、製造工程をチェックしてもらっていなかったことは、インドネシアで営業する食品会社として、うかつであったといわなければならない。
(iStock)
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 日本では最近、「ハラル認証をとってあげますよ」と、食品会社やレストランにアプローチしている団体が、いくつもあるらしい。その詳しい実態を私は知らない。そこで一般論として言いうる原則を確認しておく。

 第一、認証する権限があるのはイスラム法学者に限られる。それ以外の誰かが認証することはできない。

 中国のコンビニでアイスクリームを買って食べた。容器をみると、中国ムスリムなんとか協会が認証した「清真」マークがついていた。中国にはムスリムが多い。加工食品がハラルであるかないかわからないと、ムスリムの消費者が困るので、認証を行う団体が設立されているのである。当然、ムスリムが中心となっていることだろう。

 第二、認証する対象はあくまでも個々の食材、半製品、加工食品である。食品会社やレストランそのものを認証することはできない。ムスリムが経営していないレストランにやってきて「認証してあげますよ」という申し出があったら、怪しい。

 第三、ハラル認証は宗教的な行為なので、政府や法律は関係できない。厚生労働省などが所管すべきでもないし、監督官庁が存在すべきでもない。「ニセのハラル認証を取り締まる」などという行為もありえない。怪しいハラル認証は、消費者センターの苦情相談窓口に通報するのがせいぜいだ。

 第四に、イスラム法学者と関係のない「怪しい」ハラル認証が大手をふって通用し、日本各所にあるレストランの入り口に「ハラル」と書いてあったりすると、国際的な信用に関わる。はなはだしい場合には外交問題になる。「怪しい」ハラル認証を退治するのは、政府の役目である以前に、まず、ジャーナリズムの務めである。この問題に多くの国民が関心をもち、ジャーナリズムにチェックを求めていくことが大切だ。