ここまで「ハラル」と「ハラム」についての概要を説明しましたが、日本ではやっぱり食に関する部分を知りたいという方が多いでしょう。食に限ったことではありませんが、ハラル、ハラムに関して、国や地域、宗教法人や団体により解釈や指導が違うと感じている方は多いと思います。これは主に下記4つの学派により考え方や解釈が異なることが主な要因といえるでしょう。

ハナフィー学派:法解釈をおこなう際、個人的見解に基づく判断を重視する学派。シリアや中央・南アジア、中国に多く分布。

マーリク学派:クルアーンとハディースを重視し、自己判断を抑制する学派。北・西アフリカやアラビア半島、クウェート、UAEなどに分布。

シャーフィイー学派:クルアーン重視、判断重視の二つを統合し、イスラム法学の基礎を確立した学派で、理詰めの学派でもある。東アフリカや東南アジアに分布。

ハンバル学派:クルアーンを忠実に重視する学派。サウジアラビアやカタールなどに分布。

 また、イスラムは個人と神(アッラー)との約束の宗教なので、学派にかかわらず「何がハラムで、何がハラルなのか」は最終的には自分の判断で解釈、行動するイスラム教徒たちも多くいます。
(iStock)
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 ここから「食のハラル」に関する説明をしたいと思いますが、私が普段仕事をしているマレーシアでの基準や考え方を基本としたものであることを事前にお伝えしておきます。なお、マレーシアでは、国王によって連邦直轄領地域で有効と承認されるシャーフィイー学派をはじめとする4学派によるイスラム法、または、各州の統治者がその州において有効と認めるイスラム法やイスラム当局が承認するファトワ(イスラム教指導者が発する法令)に基づいて解釈しています。

 まず、イスラムでは、食物はハラルで「良いもの」(タイイブという)でなければならないとしています。そのため、人々は大地から有益なものを得る権利があり、与えられたその中から良いものを選ばなければならないのです。

 当然、大地から得るもの、植物はすべてハラルです。しかし、その中でも不浄なもの、害になるもの、酩酊(めいてい)させるものはハラムです。水にすむ生物に関する規定では、すべてハラルとしていますが、両生類はハラムとすることが多く、浮いている魚に関してはハナフィー学派のみ避けるべきであるとしています。

 うろこのない魚、軟体生物、甲殻類、貝類に関しては、地域による慣習で判断されているもので、特にハラル、ハラムを問われることはないようです(一部学派のみ解釈により判断が異なります)。

 飲料、微生物、天然ミネラルおよび化学物質は、植物と同じく毒性、中毒性、生命に危険なもの、酩酊させるものを除けばすべてハラルです。ただし、解毒処理された海洋生物や植物、植物から作られたものはハラルになるとしています。