しかし、医療現場のアルコール消毒や、製造現場での清浄用アルコール、また香料などの抽出時に使用するアルコールすべてにおいては、酩酊作用があるかという観点ですべてをハラムとしているとはいえません。アルコールの種類、何に使用するのかにより判断が分かれます。

 日本でもよく使われる酢。これはどうでしょう。日本では酢の使用はダメだという方が多いように思います。しかし、見解をみると自然にハムル(酒)から変化した酢はハラルだとするのが法学者全体の見解です。人為的に製造したものもハナフィー学派やシャーフィイー学派はハラルとしており、これはみそやしょうゆにもいえることで、日本は過剰に反応し過ぎているのかもしれません。確認したところ、国により基準値は異なるようですが、マレーシアではアルコールを添加しておらず、発酵過程で自然発生したもので酩酊作用のない微量であれば問題ないとの見解も出ています。
「ハラル料理」を提供する東北初の食堂「ハラル食堂」の一番人気「ハラル定食」=2017年3月、福島県いわき市
「ハラル料理」を提供する東北初の食堂「ハラル食堂」の一番人気「ハラル定食」=2017年3月、福島県いわき市
 非常に数が多く製造工程も複雑になっている添加物や何かから抽出した由来成分に関しては、実に悩ましいところです。ハラムとして禁止されている豚由来成分についても、加工、開発技術の発展した現代においては、食品製造のさまざまな場面で使用されています。使われているすべての成分を判断するのは至難の業です。

 個人的な消費者としての立場では、一括表示で判断ができず不安な時はメーカーに問い合わせています。しかし、企業のハラルをサポート、指導するコンサルタントの立場では中途半端な判断をするわけにいかないので、詳しい情報を提出していただき、原産国等を含め厳しくチェックしています。

 いかがでしたか。最後はハラル認証についてお話をしたいと思います。ハラル、それ自体は宗教の戒律にのっとったものですから、ただ一つしか存在せず、それ以上でも以下でもなく、ましてやスタンダードなるものもないと考えています。

 しかし、「認証」となると話は別です。ハラルを制度化した認証制度には賛否両論ありますが、国や地域、学派により解釈が異なる、あくまでも「その国の基準」だと捉えています。それを踏まえたうえで準拠することが取引の条件であるならば、当然取り組むべきものと考えています。

 ただ、日本は非イスラムの国であり、ムスリム人口は10万人程度です。認証に頼りすぎるあまり、知識や理解がないことの方がむしろ問題だと考えています。「相手をもてなす」ということは、「相手を理解する気持ちをもつ」ことから始まると思っていますので、まずは、ハラルについて知ることが大切だと思います。