冒頭で、クオリティー・オブ・ライフに占める恋愛や性の比率の大きさから「クオリティー・オブ・ライフはクオリティー・オブ・ラブである」と考えさせられてもきた、と記したが、これを実感するのが、配偶者と離婚や死別、未婚などシングルの立場および不倫で恋愛を楽しむ「人生最後の恋」の物語の主役となっている場合である。

 「高齢者は自身の恋愛や性を〝生きがい〟に昇華させている先輩たち」と学び、「これぞ、華麗なる加齢術か」と感じさせられたほどだ。

 人生の時間と歓びが限られてくる高齢世代にとって、恋愛や性は生き生きと日々を過ごす上での妙薬の役割を果たしているのだな、と勉強させられたのである。

 同時に、老いらく=老い楽、高齢者=幸齢者、高齢期=幸齢期、福祉=福死にしている先駆者でもある、とも感じた。置き換え可能な日本語なればこそでも偶然に思えないところが示唆的ではないか、と思った次第でもある。

 仕事、子育て、各種ローンに区切りが着いた後の10年、20年を展望する中、「恋愛や性が男であり、女である手ごたえを得られる最高のとき」「自己責任も大きいゆえ、自律の促進、ボケ防止にも最高」と位置づける人が多いと感じてきた。

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 高齢者福祉施設においても、異性を意識する気持ちは、身だしなみ、おしゃれを日常生活で実践させる効能がある。起床すればパシャマから着替え、男性はひげを剃り、女性は口紅を当てる。表情は明るくなり、食欲も湧き、リハビリに前向きになるなど施設内での行動も積極的になるのである。

 人間らしいというべきか、性という業から逃れられない人間の宿命なのか、の判断は難しい。とはいっても、21世紀に入ってアンチエイジング(抗加齢)が注目され、「恋愛や性は心身の若さ、癒やしにつながっている」と意識する人が増え、明るく前向きに考える人が多いこともメディアでも大きく取り上げられてきたのは多くの人が知るところであろう。

 出会いの場も社交ダンスをはじめ趣味やボランティア、さらには病院の待合室といった地域や日常活動で知り合うばかりでなく、スマートフォンをはじめとした携帯電話、パソコンといったIT(情報技術)の普及で恋愛や婚活のネットサイトも選択肢となったのである。

 還暦後初の高校の同窓会で、初体験同士の男女が再会して仲が復活したケースもある。男性は離婚して娘を育てて嫁がせ、女性は2人の子どもを独立させたが、定年退職した夫とは家庭内別居状態。同窓会での数十年ぶりの再会によって、2人は今日まで4年余、交際を楽しんでいる。男性は糖尿病のため、自力での勃起は思わしくない。しかし、ED治療薬は用いていない。「自力での勃起にこだわっているわけではありません。互いに裸でのスキンシップで大満足なのですよ。不倫にはなりますが、挿入にこだわらずとも充実した時間を過ごしています」と男性は私に話してくれた。