しかし、メーカーにとってユーザーとはあくまでも購入してくれる人である。お金を払って見てくれる人に向けて作るのは当然のことだ。よって、現在のAVは中高年をターゲットに作られているわけである。

 熟女物が全体の3割以上を占めているというのも、そうした背景があるからだ。AVで熟女というと30代から40代が中心。つまりユーザーの同世代か少し下の女性ということで、性の対象としてはリアルなところだろう。

 もちろん、若い女の子の出演作も多いわけだが、中高年でも若い女の子が好きだという人もいるわけだから、そうした層に向けて作るのも当然である。

 ただ、ここ数年の動きを見ていると、AVにおいて、女の子は若ければいいという考えはだいぶ薄れてきている。吉沢明歩やつぼみ、Rioなど10年以上活動しているAV女優が珍しくなくなっているのも、その現れだろう。風間ゆみなどは今年20周年を迎える。これは90年代までのAV業界では考えられなかったことだ。
(iStock)
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 アダルトではないが、同じことがグラビアアイドルの世界でも起きている。20代後半から30代のグラビアアイドルが人気なのだ。これもユーザー層の高年齢化による影響だろう。

 若い世代の流入が難しいとなれば、この先、アダルトメディアユーザーの高年齢化は進む一方だろう。するとニーズにあわせて、内容も変化するはずだ。一足先に読者が老年化している官能小説の世界でのニーズが参考になるかもしれない。

 官能小説というと、ハードな凌辱物を連想する人も多いだろうが、現在ではそうした内容はあまり人気がない。主流となっているのは、女性が積極的に誘惑してくるというもの。かといってAVで人気の痴女物のような過激な迫り方ではない。またヒロインは30代がほとんどである。20代、ましてや10代のヒロインはあまり人気がないようだ。

 面白いのは40代以上も、また求められていないということ。作家が40歳のヒロインを設定すると、編集者から39歳にしてくれと注文が入ったというエピソードも聞いている。AVの熟女物では、40代、そして50代も人気があるのだが、このあたりは文章と映像の違いに起因するのかもしれず興味深い。

 なによりも重視されるのは「癒やし」というキーワードだ。現在の官能小説の読者は刺激を求めていない。30代の女性と癒やされるようなセックスをする、これが理想となっているようだ。その理由を編集者は「日常で疲れているのに、官能小説を読んでまで疲れるようなことはしたくないんじゃないですか?」と分析していた。

 もし、AVのユーザーがさらに高年齢化が進み、官能小説と同じような年齢層になった場合、AVでも「癒やし」が重視されるようになるのかもしれない。

 過激なプレイは廃れ、穏やかなスローセックスを楽しむAV。ちょうどAV女優の人権問題が騒がれ、過激なプレイに規制がかかりそうなムードが業界にはある。ニーズに関わらず、AVはそうした方向へ向かう可能性も大きい。

 AVがそちらへ向かえば、その素材に頼っているアダルト雑誌も、必然的に同じ路線を歩むことになる。

 かつては過激で先鋭的なイメージのあった日本のアダルトメディアは、高齢化社会を迎えた時、「癒やし」のメディアとして存続していくのかもしれない。