カラオケスナックで知り合った大学生の男性とは一年程度の付き合いになり、一緒に泊りで旅行に行くこともあった。彼と別れてから現在まで、男性と付き合ったことはない。それでも男性と付き合いたいという気持ちは少なからずあるという。

 40~50代の時には、男性同性愛者向けの性感マッサージに通ったことがある。好奇心で何度か通ったが、確かにお客様として丁寧に扱ってくれるものの、金額に見合った価値があるようには思えず、頻繁に通うまでにはならなかった。

 現在は会社を休業し、週3日パートで清掃の仕事をしている。妻とは3年前から別居していたが、最近離婚が正式に確定した。黒沢さんがバイセクシュアルであることは、はっきりとは告げていないものの妻も薄々気づいていたらしく、それも離婚の要因の一つになったのかもしれない。

 離婚を協議する過程で裁判になり、妻が弁護士を立てたので、こちらも立てることになった。しかしこれまで弁護士への依頼や裁判などは一度も経験したことのない黒沢さんにとって、妻を相手に争うことはかつてない大きなストレスになった。

 このままだとストレスで自分がダメになってしまう。そこで黒沢さんは、この現実に立ち向かっていけるように「今までは絶対にできなかったようなことに挑戦して自分を強くしたい」と思い、73歳にしてデッサンのヌードモデルに挑戦することにした。

 最初の登壇では頭が真っ白になるほど緊張したが、次第に会場の空気になじめるようになった。参加者からも「年の割にはいい身体をしていますね」と言われて自信がついたため、2回目の登壇にも挑戦した。こうした中で「自分にもできる」という気持ちが固まり、離婚をめぐる裁判も無事に乗り越えることができた。

 最近はインターネットのゲイ・同性愛専門のアダルト情報サイトで、男性同性愛者向け風俗店のページや動画を観ながら性的欲求を発散している。有料サイトではなく、無料で閲覧できる素人の投稿動画もよく見ている。独り身になって色々とやらなければいけない家事があるので、短時間で欲求を解消できる動画がいい。
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 自慰行為は週に3回くらいの頻度で行っているという。毎晩22時から23時半の間にパソコンでネットを見るのが習慣になっており、24時の就寝直前まで見ている時もあるという。「この年になっても、そんなことをしている人はいないと思うのですが…」と黒沢さんは恥ずかしそうに苦笑いする。

 離婚に伴う財産分与で、現金の財産はほとんど無くなってしまったが、今のところは年金とパートの収入で生活できている。周りに性の話ができる相手は全くいない。そうした相手がいれば理想的だが、これについては仕方がないとも感じている。