今の性生活の満足度は、100点中80点。同年代よりも下、50代くらいの人と交際ができればという思いはあるが、この年になると、誰かと付き合うことはその相手に何らかの負担をかけることにつながる。若い人と付き合うと結局お金の関係になってしまうので、それはやりたくない。そう考えると、これからの恋愛や結婚は現実的にはちょっと難しい。そうした状況の中、今のところはネットのアダルト動画を観る程度で性的には満足できている。

 黒沢さんは、最近「自分はバイで幸せだったのか?」と自問自答する時があるという。両方の性を楽しめたのだから良かったのかもしれない。でもどちらも中途半端だったので、ストレートに女性だけを好きだった方が良かったのかもしれない。こればかりは他人に聞いても答えは出ないので、最後は自分で結論を出すしかないのだろうと考えている。

 高齢世代の女性に関しては、「もうセックスは卒業して、性とは無縁の穏やかで円満な夫婦関係を送っている」というイメージ、そして単身の女性高齢者に関しては「性とは無縁の枯れた存在」というイメージがある。

 しかし、それらはいずれも幻想に過ぎない。『セックスレス時代の中高年「性」白書』(日本性科学会セクシュアリティ研究会編 株式会社harunosora)のデータを見ると、パートナーとの性欲ギャップに悩んでいる生々しい中高年女性の姿、いくつになってもセックスへの未練や執着を断ち切れずにモヤモヤしている単身女性の姿が浮かび上がってくる。

 「この1年間に性交をしたいと思ったことはどれくらいあるか」という質問に対する回答は、「願望があった」「たまにあった」を合わせると、配偶者のいる60代女性は42%、70代女性は33%に達する。単身者の場合も、60~70代女性の32%が性交への願望を抱いている。
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 夫婦間のコミュニケーションや性生活のメンテナンスをこれまで何十年も怠ってきた場合、高齢期になってからそれらを再始動させることは極めて困難だ。その一方で、単身の人や配偶者と離別・死別した人が新たなパートナーを獲得することにも困難が伴う。

 ありもしない夫婦関係の再構築や、ありもしない恋愛や結婚(再婚)による救済に惑わされずに高齢期の性を充実させる「第三の道」としては、女性の場合、アダルトグッズの活用や性感マッサージの利用などがある。

 女性向けのAVに出演している男優(通称:エロメン)のサイン会やイベントには、少なくない数の中高年の女性たちが参加しているそうだ。サイン会では来場者一人一人に対して、男優がサインや握手だけでなく、名前を呼びながらハグをしてくれる。「憧れの男性が自分の名前を覚えてくれて、抱きしめてくれる」というシチュエーションに身を投じることで、十代の頃に戻ったような高揚感を味わえるという人もいる。

 握手とハグだけであれば、夫を裏切っているわけではないので罪悪感も無い。ストリップ劇場に通って全裸の踊り子を見ることでエネルギーを充填する高齢男性は昔から存在するが、中高年女性にとってのストリップ劇場に該当するのが、エロメンあるいは半裸で踊る細マッチョの韓流アイドルなのかもしれない。