つまり、今回の施策をまとめると、地域医療連携部と各大学医学部・病院を直結することに伴う「医局制度の復活」ということになります。特に地域における人事面で目立ち、まるで昔の良き時代を求めているようです。そしてもう一つは、地域医療における都道府県地方自治体の介入の法的担保です。
(iStock)
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 ところが、今の医局、特に地方医大の力は弱くなっていますから、正直大丈夫かと疑問がわきます。まして、協力する根拠が薄弱(特に私立医大)にもかかわらず、教授たちが協力するでしょうか。さらに、介入する地方自治体の能力によっても差が出るでしょう。

 少し詳しく書いていきます。まず今回、厚労省は医療過疎である僻地に医師を派遣するにあたり、先ほどから出ている「地域偏在に関する客観的で有効なデータ」をもとにするとしていますが、この客観的なデータはどこにあるのでしょう。

 もし、医師不足や偏在対策のために各都道府県が策定した「地域医療構想」のデータを、厚労省が現在使っているとすれば、正直5年後にはそのデータは使い物にならない可能性があります。実は、地域医療構想においては、数年前の医療ニーズに基づいて患者の数を予想し、そこから地域の医師の必要数を含めた医療を評価しています。そのデータに今後の医療の進歩は入っていません。

 それこそ、がん治療薬のオプジーボ、次世代型キメラ抗原受容体発現T細胞(CAR-T)療法といった先進医療は全く入っていないのです。よって今後必要になってくる新たな「がんサバイバー」の増加への対処は全く考慮されていません。そうすると、大学のような3次医療機関で必要な医師数が増加するため、最初の必要医療者数の前提が不安定となり、そこから導き出される計画はいい加減といわざるを得ません。ちなみに、厚労省が定義する「医師偏在の度合い」のデータは以下の条件を考慮して作成し、全国ベースで客観的に比較・評価することができる指標とされています。

(1)医療需要
(2)将来の人口・人口構成の変化
(3)医師偏在の度合いを示す単位(区域、診療科、入院/外来)
(4)患者の流出入
(5)医師の年齢分布
(6)僻地や離島などの地理的条件

 ただし、今までがん統計すらなかった日本にこれだけのデータが今あるのか不思議です。医療需要も定義によっては、倍以上の変動が出るからです。