だから稲田は元来、防衛大臣よりも法務大臣の方がまだしも「適材」だったということだが、ひとえに稲田のタカ派的、保守的価値観を重視して防衛大臣に抜擢した安倍総理のミスチョイスである。仮に稲田が辻元と対決した際、それが法曹分野であればまだしも互角の戦いができたはずだ。
辻元清美氏の質問に答弁する稲田朋美氏(右)=2016年9月、国会(斎藤良雄撮影)
辻元清美氏の質問に答弁する稲田朋美氏(右)=2016年9月、国会(斎藤良雄撮影)
 稲田の失敗は、稲田が単に保守層から受けがよい、という一点をもってして、本来素人レベルの知識や教養しか持たない稲田を防衛大臣という要職に就けたこと、それに尽きる。稲田は本来の専門分野に戻るべきである。

 弁護士としての稲田ができることはいくらでもある。「法テラス」という存在すら知らない若年労働者への法的救済への提言。レイプ被害者への法的救済と物心両面での救援。さらに日本の遅れた司法制度―代用監獄や、取り調べの可視化問題―での制度改良の提言などなど。

 弁護士である稲田の本来の実力は、こういった部分で発揮できるのであり、軽佻浮薄(けいちょうふはく)な発言を連発することで保守派の受けを狙う歴史問題ではない。失礼を承知で言うが、稲田の著書を何冊か読んだ私でも、稲田の近代史理解は一般的な学部生かそれ以下で、専門家とは程遠いレベルにある。近代史に関する基礎的素養が足りなすぎるので、先の大戦に関する認識は左派からも、そして保守からも、あるいは史学の入門者からも一笑に附されて終わるレベルだ。

 稲田は素人感覚で参入している歴史問題から手を引き、専門の法曹分野に特化して、弱者救済や我が国の司法問題の改良へ努力すれば、近い将来稲田への評価は徐々に上がっていき、再入閣の芽は出てくる。その場合、防衛大臣は二度とないものの、司法と国民が密に接するポジションで、彼女の本来の良さが発揮されることであろう。(文中敬称略)