北朝鮮の漁船が日本の排他的経済水域で違法操業をするようになったのは、北朝鮮が近海の漁業権を中国に売り渡してしまったためである。北朝鮮の漁民が北朝鮮当局の指示や承認なしに日本列島に接近出来るわけはないから、北朝鮮が漁民の利益を考えて派遣している側面は否定できない。

 だが、その漁場が日本の排他的経済水域であるのを知って派遣している以上、これが日本への政治的圧力として作用することも当然認識しているわけである。さらには大量の漁船群の中に工作船を紛れ込ませ、日本への上陸侵入を画策するのは北朝鮮の工作機関としては当然の行為であろう。

 とはいえ、工作員が上陸するしないにかかわらず、北朝鮮当局が日本の排他的経済水域での違法操業をさせている時点で既に侵略なのであることは、さきに述べた通りである。侵略に対しては自衛としての軍事対応が国際法上認められている。日本には自衛隊という自衛のための軍事組織が存在している。ならばなぜ、自衛隊が出動しないのか。

 日本では海上警備は一義的に海上保安庁が担当している。しかし、上記2例については、海上保安庁は明らかに対応不能であった。海上保安庁が対応できない以上、自衛隊が対処するしかないのは明白である。

 そもそも事は尖閣における漁船衝突事件にさかのぼる。2010年9月に尖閣諸島の日本領海内で中国の漁船が海上保安庁の巡視船2隻に体当たりし、対する海上保安庁はこの漁船を捕獲し乗組員を拘束した。
尖閣諸島沖で巡視船「みずき」に衝突する中国漁船=2010年9月
尖閣諸島沖で巡視船「みずき」に衝突する中国漁船=2010年9月
 逆ギレした中国政府は北京、上海などで反日暴動を惹(ひ)き起こし在留邦人を恐怖に陥れたばかりか、日本人社員4人を人質に取った。さらに日本へのレアアースの輸出を停止し、日本に謝罪と賠償を求めた。

 ここで米国政府が「尖閣諸島は日米安保条約の発動対象」と明言したため、事はようやく収まったのである。つまり中国が尖閣諸島を占領した場合、米軍は中国を攻撃すると宣言し中国が慌てて矛を収めたのだ。

 だが、米国としても中国と戦争を望んでおらず、そこで米中間で尖閣諸島での軍事行動を双方が控える旨の合意がなされた。つまり中国が尖閣に軍隊を派遣しない限り、日米も自衛隊や米軍を出動させないという約束である。

 戦争を回避するための合意だが、逆に解釈すると中国が海洋警察や海上民兵を軍隊でないと主張して派遣すれば、日本は自衛隊を出動させられないのである。中国はこれに味を占めて海洋警察を毎日のように派遣し、しまいに漁船群が押し掛けるに至り北朝鮮も同調したわけだ。

 端的にいえば、米中のこの合意が、かえって中国や北朝鮮の対日侵略を助長させているともいえよう。日本としては米国に働きかけて、この合意を破棄させ日米中における新たな安全保障の枠組みを構築すべきであろう。