状況が飲み込めない中、何人もの私服警官に周りを固められ、奥に長く続く廊下を歩き、狭い取調室にいれられました。携帯電話や電子機器は全て預けるようにと、言われるがままにすると、席に座るやいなや、事情を聞くと言いながら、「さっさと自首をしろ!」と部屋に響き渡る罵声を浴びせられました。今でも鮮明に思い出されます。

 「何の容疑なのか」という質問には一切答えず、「往生際が悪い」「自分の心に聞いてみろ」「こんな若造を市長に選んだ美濃加茂市民の気が知れない」…、2人の警察官が交互に私の耳元で罵声を浴びせ続けました。少しでも自分の知っている限りの話をしても一切耳を傾けることも興味を示すこともなく、机に置かれたバインダーの上の白い紙には何も書かれないまま数時間が過ぎました。

 らちが明かないと考え、「市役所に帰らせて欲しい」というと、「市役所に戻ったところでマスコミが取り囲み大変なことになる。まずは早く自白して、こっちで対応した方がいい」と、既に逮捕ありきであることを確信させるようなことを言い出しました。「本日中に逮捕状が出なければ帰る」という条件で、その場に残ることとなりましたが、その夜、私の目の前に逮捕状が届けられました。しかし、「10万円と20万円の2回も」との内容。「は?」というのが正直な心境でした。

 どんな容疑をかけられているのか全容が分からない不安と、必ず間違いであると証明され、すぐに帰れるだろうという自信との葛藤。そして何より、美濃加茂市はどうなっているのか。市役所や市民の皆さん、支援者の人たちは大丈夫なのか。そんな中、名古屋で活躍されている弁護士の方々を知り、郷原弁護士とも出会うことができました。

 その後と裁判の詳細は著書に譲りますが、「証拠は全てそろっている」と言いながら、恫喝(どうかつ)を繰り返す取り調べや、今回の事件とは直接関係のない、市長選の関係者に厳しい捜査が及んだことを振り返ると、捜査に携わった人たちは果たして「藤井は有罪である」ことに確信を持っていたのか疑問を感じます。

 最高裁での判断は上告棄却となり、残された異議申し立てをしましたが、12月26日付でこれも退けました。この先は、再審請求を含めて、民事訴訟なども進めながら今回の事件事実を明らかにする活動を続けていきます。
2017年12月13日、上告棄却を受けた記者会見後、支援者(左)に励まされる岐阜県美濃加茂市長の藤井浩人被告
2017年12月13日、上告棄却を受けた記者会見後、支援者(左)に励まされる岐阜県美濃加茂市長の藤井浩人被告
 同時に、冤罪事件の当事者として身をもって知ることとなった司法の改革の必要性や、5年間で獲得することができた地方自治体における課題の解決、市民の皆さんをはじめ多くの方々からいただいたご支援に対し恩返しをするためにも、政治家としての再起を念頭に努めていきたいと思います。