日本人にコンビニの24時間営業は本当に必要か

『平野和之』

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平野和之(経済評論家)

 政府の働き方改革、人づくり革命か。はたまた、高齢化、労働人口減少の人件費高騰の負のスパイラルか。サービス業が元日営業や24時間営業の見直しを余儀なくされている。
(iStock)
 また、24時間営業をコンビニエンスストアでも一部見直す動きがあり、これは是か非かという議論も少なからずある。とはいえ、やはりコンビニの24時間営業も徐々に減っていくだろう。その一方で、国では夜間市場拡大などを目指す「ナイトタイムエコノミー」議連が発足し、インバウンド(訪日旅行客)向けの夜間の経済効果5兆円を狙う政策論など、矛盾と期待がはらんでいる。今回はそれらをまとめて考察してみたい。

 外食産業などを含めて、元日営業や24時間営業を見直さざるを得なくなったのは、労働人口減少もさることながら、発端はブラック労働問題の方が大きい。特に、ゼンショーが運営する外食チェーン店で起きたワンオペ問題は記憶に新しい。

 サービス業は「サービス残業」で成り立つ産業、ブラック労働で労働者の賃金を会社の利益として搾取していたからこそ、成り立っていたなんて皮肉がささやかれるほどであった。今やネット時代、不正は即社会問題に発展するケースも多くなったが、この流れは昨年相次いで発覚した製造業のデータ偽装問題に通じるものがあろう。

 かくいう私も残業100時間、200時間も年俸制、成果報酬という大義になれば、自然とブラック労働化させられていた記憶も今は昔である。それが、かっこいい時代もあったが、今はストレス社会、世界の潮流とは逆行している。

 ただし、アジアという地域に限れば、それが、文化でもあり、日本がアジアで最初の働き方改革に挑戦しているという見方にならないと、欧米並みの労働生産性は実現しないだろう。

 高齢化による労働力不足をカバーし、アベノミクスを成功させる唯一の方法は、労働生産性を引き上げるほかない。その中から出てきた政策が働き方改革であり、人づくり革命である。日本のサービス産業はアメリカのサービス産業の労働生産性の半分程度であり、引き上げる余力が大きいからである。

 大規模チェーン店などの場合、サービス産業で労働者を雇用する場合、8割は非正規労働者である。外食は24時間営業をやめるケースも増え始めた。コンビニなどでは、深夜、早朝に清掃や陳列などを行っているが、夜間の人件費高騰とその業務オペレーティングコストをてんびんにかけた場合、外食は来店者数が明らかにコンビニよりも少ない分、24時間営業を廃止する流れが加速している。

 また、人々の生活習慣の変化も、24時間運営のメリットを享受できなくなった要因の一つであり、今後もそのメリットが経営サイドから薄れていくのは間違いない。

 労働人口は減り続け、採用コスト、人件費は上がり続ける。内需においては、少子高齢化、高齢者ほど人との交流も減り、夜間の生活習慣は減っていく。むしろ、早朝などライフスタイルの変化が24時間営業の見直しの主犯といえるのかもしれない。

 では、元日営業はどうかといえば、これは、2つの側面でのメリットがあると考える。たとえば新年売り出し、1月と2月は長い個人消費の低迷月であり、新年初売りは数少ない稼げる日である。ただ、初売りが早くなり続けたのは、各社がフライングし続けてきた商習慣の結果ともいえるだろう。
新春の初売りが行われ、お目当ての福袋を買い求める客=2017年1月2日、東京都中央区の三越日本橋本店(黄金崎元撮影)
 消費者が希望したというよりは、サービス業のサバイバル戦術のなれの果てといえるかもしれない。早ければ早いほど、客が集客できたのもまた事実である。その理由は生活スタイルの変化であろう。

 おせちは、通販などで購入する時代になり、自分では作らない。昔のようにおせちをつくり、初詣に行くのが当たり前ではなく、今や年末はゆっくり過ごし、正月にはイベントに出掛ける。最近では大みそかまで仕事という人も増えたが、人件費が高騰し、働き方改革が叫ばれる中で、冷静に考えればそこまでやる労力とリターンが見合うのかどうか甚だ疑問である。

 小売店などでは福袋以外は特に売れないわけで、工夫の仕方では、通販による福袋の予約は元旦以外でもできるだろう。しかし、みんながそろってやめれば、元日営業店は残存利益が出る可能性もある。このいたちごっこをどう判断すべきか。ここに働き方改革の方向性が集約されるだろう。

 さて、本当に元旦にゆとりをもたせるのであれば、サービス業向けに元日休暇減税など、まじめに議論すべき時代なのかもしれない。

 さらに、サービス業の一部では元日インバウンドの恩恵などもある。インバウンドの元日消費といえば、政府も社会も働き方改革を、24時間営業の見直しをという風潮がある中で、ナイトエコノミー議連が発足した。これは、インバウンドの外国人観光客は夜の消費額が大きく、この政策を推進し、経済効果を5兆円引き上げようとする動きである。イギリスでは週末の地下鉄は24時間運転であったり、海外のショーは深夜帯が人気だったりする事例があるとはいえ、日本ではさすがに唐突感が否めない。
量販店で自撮り棒の使い勝手を試す外国人観光客=2017年10月3日、大阪市中央区(織田淳嗣撮影)
 これが成功するかどうかは、IR(統合型リゾート)推進法制定後の動向を見極めるほかない。地方の観光都市では、労働者が高齢者ばかりで、深夜に働き手が集まるとは思えない。都市部でも夜間の労働力をどうするのか、課題は多い。今後、地域の実情に合わせた規制緩和論、財政出動論などが出てくるだろう。

 これからの傾向として、24時間営業も元日営業も確実に減っていく。コンビニのFC(フランチャイズ)、ショップの代理店制度など、人件費高騰のリスクを親元が負担する制度を法制化すれば、即座に激減するだろう。

 その場合、人の行き来、夜間でいえば光がなくなることでの社会問題、治安などのリスクが高まる。働き方改革と夜間の経済成長力、社会の存続と相反する矛盾をいかに解決できるかに注意していく必要がある。



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