⑤THPケアシステムは日本を救う…「安楽に生きたい、安楽に死にたい」と願う人々のために、在宅ホスピスの心を理解し、「希望死・満足死・納得死」を届け、実践できるチーム作りを進めていくことが急務だと思っています。チームのスキルを上げるために、多職種連携・協働・協調することはもちろん、その司令塔としての役割を果たす「トータルヘルスプランナー(THP)」が必要です。安楽死の必要のない日本にするためには、THPを増やすことが必要だと考えています。なお、THPは現在名古屋大医学部保健学科や日本在宅ホスピス協会が育成しています。

 私の著書『なんとめでたいご臨終』(小学館)は、誰もが願う旅立ちをかなえるための実践本です。私自身も安楽に生きて安楽に死にたいと願っています。だからといって、安楽死や持続的深い鎮静を望むことはありません。なぜなら私は「在宅ホスピス緩和ケア」を知っているからです。私の考える在宅ホスピス緩和ケアの「在宅」とは、暮らしている「処」。「ホスピス」とは、いのちを見つめ、生き方や死に方、看取りのあり方を考えること。「緩和」とは、痛みや苦しみを和らげること。「ケア」とは、人と人とが関わり、暖かいものが生まれ、生きる希望が湧(わ)き、生き力がみなぎることです。だからこそ在宅ホスピス緩和ケアを受けることでQOL(Quality Of Life)が高まり、ADL(Activities Of Daily Living)の向上や延命効果も期待できるのだと思います。

 在宅ホスピス緩和ケアは、誰でも受ける権利があります。だからこそ、自分自身が望む処で、「人に迷惑をかけることなく、耐え難い苦痛から解放され、朗らかに生きて、清らかに旅立てる、安楽に生きて安楽に死ねるという在宅ホスピス緩和ケアがある」と知っていれば、安楽死を望む人はいなくなると思います。
(iStock)
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 これまでお伝えしたように、安楽死や持続的深い鎮静を選択しても、安楽には死ねません。「安楽に死にたい」と願う人々が「なんとめでたいご臨終」を迎えることができれば、1991年の東海大学医学部付属病院での安楽死事件などは起こらなかったのではないでしょうか。

 人は一度しか死ねません。どうせ死ぬなら笑って死にたい、遺(のこ)された人の役に立ちたい。そんな「死ねる喜び」を感じられたなら、幸せの極みだと思います。

 多くの国民のそんな願いをかなえるためには、国家戦略として在宅ホスピス緩和ケアを推進していくこと、在宅ホスピス緩和ケアを国民に啓蒙(けいもう)していくことが近道だと考えます。それができれば、QOD(Quality Of Death)はさらに高まり、朗らかに生き、笑顔で旅立てる、つまり「なんとめでたいご臨終」を享受できる日本になると思います。と同時に、安楽死という言葉が不要になる日本になってほしいと願っています。