先発の美馬、中継ぎの則本、そして抑えの田中。今日、楽天の3人が投げた“魂の入ったボール”は、間違いなく日本シリーズの歴史に残るものだった。闘志、気迫、魂……どんな言葉でも言い表せない投球だったと思う。

 いったい何に感動したんだろうと、私はずっと考えていた。そして、あることに気がついた。それは、田中の志願の登板が、「自分のため」ではなく、「他人のため」だったことである。

 田中が「自分のこと」だけを考えていたなら、肩を壊す危険性もある連投は絶対に「避けた」だろうし、「避けなければ」ならなかった。メジャーへの挑戦という大いなる未来があるなら、なおさらだ。だが、田中は、「自分のこと」よりも、「腕が千切れても登板を」という方を選んだのである。
日本シリーズ第7戦で優勝を決め、嶋基宏捕手と抱き合って喜ぶ田中将大投手(当時)=2013年11月
日本シリーズ第7戦で優勝を決め、嶋基宏捕手と抱き合って喜ぶ田中将大投手(当時)=2013年11月
 私は、あの阪神淡路大震災の時に、イチローを擁したオリックスが“がんばろうKOBE”をスローガンに掲げて、震災の年(95年)と、翌年(96年)にパ・リーグ連覇を成し遂げ、2年目に「日本一」となったことを思い出した。

 あの時、阪神淡路大震災の被災者がどれだけ勇気づけられたか知れない。一方、若い球団である楽天は、オリックスのように震災のその年にリーグ優勝することはできなかったが、東日本大震災から3年目に「リーグ優勝」と「日本一」を成し遂げたのである。

 楽天の優勝をあと押しする人智では推し量れない“何か”があったのかもしれない。しかし、それは、田中が最終戦に見せた「自分のため」ではなく、「他人のため」という姿が呼び寄せたような気がする。

 それは、田中にかぎらず、3番打者の銀次をはじめ、岡島、藤田、嶋…等々、ナインに共通していたように思う。そこが、観る人をあれほど感動させたのではないだろうか。2013年プロ野球の締めくくりに相応しい感動の試合を楽しませてもらった。(「門田隆将オフィシャルサイト」より2013年11月3日分を転載)