松岡洋平マーケティング・ディレクターは「大量で多様な記事の中から人間が記事を選ぶ時間はない。有料無料を問わず、『よりたくさんの記事の中から、読者の反応などを見ながら機械が選んだ』記事を求める読者も多い。ニュースの見方もいろいろあり、スマホを使って短時間で心地よく見たいというニーズに答え、読者をさらに増やしたい」と話す。ITを使うことで、同じような内容に記事がダブった形でアップされることを防ぐことができるという。社員の6割以上がITエンジニアで、まさにエンジニアによって作られるニュースアプリだ。しかし、人権、差別問題と言った編集上の微妙な判断が求められる記事をAIが判断するのは難しい。大量の記事を機械がさばきながら、編集の質をいかに確保するかが、ここでも問われている。

 ニュースサイトがどれくらい見られているかを示す数字として、ページビュー(PV)やアクセス数がよく使われる。しかし、実際に利用者が閲覧する回数よりも多めに表示されることも多く、注意する必要がある。PVの計算方法は、同じ人が10回閲覧しても、10人が1回ずつ閲覧してもページビューが10増えたように表示される。一方で、ユーザーが同一人物の場合には複数回閲覧しても1として数える手法もあり、ユニークユーザー数とも呼ばれる。LINEが言う月間アクティブユーザー数というのは、1カ月の期間内で同じ人が複数回アクセスしても1として数えるユニークユーザー方式で、「アクティブ」と付くのは、1カ月に1回以上利用していれば「アクティブに利用しているユーザー」とみなすという意味だ。

 その場合でも、職場のパソコンでニュースを読んで、帰宅してから自宅のパソコンで同じニュースの続きを読んだ場合は、読んだ人間は同じでもアクセス数は2回にカウントされる。読む人は同じでも、パソコンやタブレット、スマホなど異なる端末からアクセスできる時代になっているため、厳密な意味での別人が何回アクセスしたかを調べるのは難しい。

 また、検索エンジンが各サイトを巡回する際の機械的なアクセスや、ニュースアプリから自動的にコンテンツを拾ってきて何らかの処理をする人工知能のようなプログラムなども1人としてユーザー数に含まれる。このような、人間の代わりに自律的に動いてくれるプログラムを一般的にbot(ボット)と呼ぶ。有料サイトであれば契約数という確実な指標があるが、無料サイトの場合、botと人間を区別することが難しいため、正確な利用者数を把握するのは難しいのが現状だ。このため、月間アクティブユーザー数はサイトの規模を表す一定の指標にはなるが、算出方法の厳密な決まりがあるわけでなく、サイトによって計算方法がまちまちなことが多い。悪質な業者は、botを使って自社サイトの閲覧数を水増しすることで広告料を稼いでいる例もあるようだ。

『週刊文春』
『週刊文春』
 ニュースサイト間の競争がし烈になる中で、LINEとの提携に踏み切った「週刊文春」の新谷学編集長(52歳)にその狙いについてインタビューした。

Q 「週刊文春」がネット(LINE)にスクープ記事を提供する理由は

A 新谷編集長 昨年はスクープが多く出たので「週刊文春」は前年比較で10%伸びたが、私が編集長になった12年からみると、徐々に減ってきている。これまで予告記事はヤフーなどの無料サイトに提供してきたが、「文春」ブランドに注目が集まる中、新たな読者を増やしたいので、有料でスクープ記事を全文提供することにした。新規読者の開拓にはデジタルが最も有効だと考えた。

Q LINEと提携した理由は

A 提携先をどこにするかヤフーとLINEの両社と協議した。最終的にはLINEの方が「熱意」が感じられ、決断が速かった。20歳代から40歳代の女性が多いLINEの読者層はマーケットとしても魅力的だった。

Q 有料で提供する狙いは

A 無料のニュースコンテンツからは良質な記事は生まれない。いままでは、ヤフーなどプラットフォーマーがコンテンツを提供する側よりも力関係が上だったが、良いコンテンツを作れば向こうから「お金を払ってもいいから掲載させてほしい」と言って来るはず。これからは良質なコンテンツを武器にプラットフォーマーとの関係を正常化させたい。そうすれば取材費、人件費をかけたクオリティの高いコンテンツを提供し続けることができる。

Q  LINEで見る料金を1回240円にした根拠は

A 雑誌の価格が400円で、ネットの場合は印刷代や紙代が掛からないこと、特集しか読めないことなどを考えて決めた。コンテンツビジネスにおいては適正な価格設定が重要だ。

Q 文春は自社のサイト「文春オンライン」を立ち上げたそうだが

A 1月25日に開設した。当初は「月刊文藝春秋」「週刊文春」などのコンテンツの一部を無料で掲載するが、近い将来は課金ができるサイトを目指すべきだ。


なかにし・とおる  経済ジャーナリスト  1948年岡山県生まれ。1972年共同通信社に入社、経済分野を取材し編集委員などを経て2010年に退職し、現在は経済ジャーナリスト。

【訂正】BuzzFeed Japanに関する記事および、古田大輔・創刊編集長へのインタビューにつきまして、多数の間違いがありましたので、当該カ所につきまして、削除させていただきます。