JOCであれば、オリンピック運動のための施策を役員が示し、それに職員がこれまでの知識、経験、情報を基に議論し、行動計画を策定して実行に移すプロセスが最も理想的な関係である。私の場合、最もうまく機能したのが、荻村伊智朗JOC国際委員長(国際卓球連盟会長)の時であり、彼との蜜月関係が長野冬季五輪招致の成功やアジアスポーツ界の分裂回避、そして東アジア会議創設などにつながった。

 しかし、このような成功例は一方で、役職員がその使命を果たそうと思わなければ、それは「ただのサロンの集まり」と化す危険性もはらんでいる。言い換えれば、地位にさえ安住していれば、そこで起きたトラブルは、仲間同士でうまく解決することを優先してしまう。つまり、事が起こること自体を回避するのが目的となってしまう。今の大相撲はまさにこの悪循環ではないだろうか。

 日本相撲協会は役員もかなりの高額報酬を得ていると聞く。報道によれば、理事で年収2100万円。お金も名誉も手に入れれば、そこに安住したくなるのが人情というものである。今後は、真摯(しんし)に「相撲道」を追求するという協会の目標に向かって、無報酬でも取り組む人材で理事会を構成し、事務局強化に資金を投じることを考えるべきではないだろうか。
大相撲初場所を終え、横綱審議委員会に臨む八角理事長(右から2人目)ら日本相撲協会執行部=両国国技館(田村亮介撮影)
大相撲初場所を終え、横綱審議委員会に臨む八角理事長(右から2人目)ら日本相撲協会執行部=両国国技館(田村亮介撮影)
 また、相撲協会の定款には「目的」の一つに「国際親善活動」が明記されている。この活動にもっと精力的に取り組めば、世界への普及という新たな視野が開け、密室的な相撲協会の体質改善になるだろう。外国人力士が増えてきた今こそ、彼らを大相撲アンバサダーとして海外に派遣し、相撲の普及を図り、日本の精神を世界に広める活動に力を注ぐべきである。

 言うまでもないが、JOCの場合、オリンピック競技大会が「世界平和構築」運動という理念の場に参加するのが目的である。そこに参加する各競技の選手役員は、自身の競技だけではない「次元を超えた体験」をし、その意志を目覚めさせる。

 大相撲は日本の伝統的国技であり神事でもあるが、一方でスポーツとしての価値も追求すべきだろう。詳しくはまた別の機会をいただきたいが、かつて私は世界の格闘技を研究し、相撲ほど格闘技の粋を圧縮したものはないと思っている。「総合格闘技の頂点」として、大相撲のあり方も相撲協会再生のヒントになれば幸甚である。大相撲を救うのは、世界への視野と行動しかないのかもしれない。