さらに先の校長はこんなことも懸念していた。「記述式の採点は専門の業者が行うというが、いくら専門の業者でも、50万人分の答案を採点できるほど専門の職員がいるとは思えない。実際は大量のアルバイトに採点させることになるのではないか」。結局は素人に機械的に採点させるのなら、記述式問題を出す意味があるのかという、もっともな疑問だ。

 また「日本テスト学会」は試行テストに見られた「5つの選択肢の中から適当なものをすべて選べ」というような多肢選択問題について、実際は選択肢ごとにそれが適切か否かの二者択一をしているにすぎず、「より深い思考力」を求めていることにはならないと指摘する。さらに「テスト理論」の観点から、5問正答のみを正答とし4問以下の正答は0問正解と同じとみなしてしまうことについて、「貴重な個人差情報を捨てる」と批判的な声明を出している。

 以上を総合すると「だったら記述式問題も多肢選択問題もなしにして、現行のセンター試験のままでいいじゃないか」という結論になりかねない。

 報道によると、テスト理論の専門家がすでに再三にわたって問題点を指摘したにもかかわらず、軌道修正がされないまま今回の試行テストが実施されたとのこと。だとすると、今回の試行テストは「見せ球」の可能性が高い。「このままではGOできない」とわかっているが、一見していままでとは明らかに違う案を見せておいて、公に批判を浴びる中で現実的な案に収斂(しゅうれん)していくのが文部科学省の作戦なのかもしれない。無理筋な改革を押しつけられたときにとるべきプロセスとしては間違ってはいない。ただしそれは、最終的な着地点が現行のセンター試験を「お色直し」した程度のものになることを見越しているからこその作戦だと言えなくもない。

 英語の試行テストについても始まり、全国の158高校で順次実施される。英語に関しては民間資格・検定試験の活用も同時に検討されており、それとの兼ね合いも論点になる。現時点で英検やGTEC、TEAPなどが名乗りを上げており、審査の結果が3月に発表される。

 改革によって得られるものと、生じる混乱のどちらが大きいか。

 新テストの実施まで、すでに3年を切っている。早めに混乱を回避する十分な策がとられなければ、新テストを回避しようとする思惑が、受験生の志望校選びに影響を与えかねない。