このような平易な難問は、センター試験の国語においても見られます。センター試験は資格試験ではなく選抜試験であるため、適切な平均点が求められます。しかし、センター試験はさまざまな学力を持つ高校生が受験するため、難解な文章は基本的に出題できません。そこで、文章そのものではなく、選択肢をややこしくすることで難度を調整することになります。その結果、正答として疑わしいと評されるような、質の悪い選択肢が再三出題されてしまいました。例えば、次のような専門家の指摘があります。

 問5 問題文の全体を通した設問であり、また「地球儀」という題名からもここを問うのは妥当だが、1の「ふがいない自分」や「息子」にかかわる記述は正答として疑わしい。誤答の選択肢も凝りすぎており、問題としての質を下げた。

ムーミンを取り上げた2017年度のセンター試験
地理Bの問題
 こうして、問題文は平易なので読解できても、選択肢が凝り過ぎているため正解できないという平易な難問が完成します。そして、この受験専用に作られた平易な難問に対し、受験産業は頻出問題を網羅した問題集やさまざまなテクニックを開発します。当然ながら、少しでも偏差値の高い大学に合格しようとする受験生は、こうした受験専用の知識・テクニックを頭に詰め込むので、特別な策を講じない限り、受験は知識偏重の入試に行き着いてしまいます。より正確に言えば、受験しか使えない知識偏重の入試のせいで、受験生は不毛な努力を強いられることになるのです。

 それでは、次に平易な難問を避けるための方法を示します。各教科によって具体的な方法に違いはあるでしょうが、おおよそ次の三つが考えられます。

 まずは、各大学が自由に試験範囲を設定することが必要です。特に数学や物理については、学力上位の受験生にとって出題範囲が簡単すぎるため、平易な難問にならざるを得ません。だから、もっと難しい範囲まで広げて、素直な作問でも選抜試験として機能するように工夫すればよいわけです。「平易な難問」から「難解な基本問題」への転換です。引き続き、知識偏重の試験にはなってしまいますが、大学受験しか使えない平易な難問を攻略するための知識より、格段に有益なことを学べます。一方、試験範囲を各大学が自由に設定してしまうと、学校の教科書だけでは入試を突破できないという批判もあるでしょう。でも、それは現行の入試でも全く同じことが言えますので、新たに起こる問題ではありません。

 次に、大幅な試験時間の延長と専門職員(アドミッションオフィサー)の養成が必要になります。問題数が少ない数学の試験でさえ、1問あたりに与えられた時間は10分程度です。これでは、本格的な難問は出題できず、やはり平易な難問になってしまうからです。また、これらに対応できる専門職員も足りません。

 何より資格試験にすればいいのではないでしょうか。資格試験は、必要な能力を習得しているかどうかを判定するための試験ですので、平均点の調整が不要です。したがって、素直に作問すればいいわけで、平易な難問とは似ても似つかない問題になります。