石川一郎(香里ヌヴェール学院学院長)

 「ゆとり教育の二の舞になるのでは?」2020年度からの大学入試改革について、多くの教育現場で講演をする機会を今日いただいておりますが、「ゆとりの時も変わらなかったのに、今回は本当に変わるのですか」という質問を現場の先生方からされることがあります。そんな時は、「今回の教育改革は社会的要請です」とお話をします。

 社会的要請とは何か。ゆとり教育の議論から約20年間の社会の変化を考えてみると、主に3つの変化が挙げられると思います。


①グローバル化が加速をつけて進んでおり、日本国内で生活を続けていく上でも海外との関係を無視することはできない状況となっている

②インターネットの普及によって情報に対するアクセス方法が変化するとともに、情報の活用という新しい産業が生まれてきている(IOT)

③人工知能(AI)が今後飛躍的に進化することが予想されており、2045年にはAIが人類の知能を超える転換点(技術的特異点)、「シンギュラリティ」に到達すると予想されている


 これからの20年から30年で社会は大きく変化し、産業や働き方も今までと全く異なったものになることが予想されているのです。となると、未来社会で求められるコンピテンシー(資質)は、現在求められているものから大きく変化することは間違いありません。
(iStock)
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 ゆとり教育は、1990年代以前からもあった「落ちこぼれ」や「不登校」の問題が深刻化する中で、21世紀の教育はかくあるべき、という話からスタートしたのではないかと思います。社会的には、反対ではないものの、そこまで大きな変化を教育には求めていなかったのではないでしょうか。

 1996年の中央教育審議会の答申には、教育の考え方について「これからの子供たちに必要となるのは、いかに社会が変化しようと、自分で課題を見つけ、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し・・・」とあります。今回の教育改革の狙いである「主体的、対話的で深い学び」は、ゆとり教育が目指すものの延長線上にあると言ってもいいと思います。

 そして、ゆとり教育と並行して教育現場で行われた施策は、学校週5日制でした。5日制を実施するにあたり、授業時間は当然削減しなければなりません。そこで文部科学省は、授業時間が減って学力低下が起きないように、教育の中身の「質的転換」を目指したのです。その目玉となったのが総合学習の導入でした。「量的転換」と「質的転換」セットの改革であり、5日制を導入することで教員の働き方改革も狙いとしては当然あったと思います。