フィギュアスケートにはジャンプやスピンなどの技術に点数をつける「技術点」のほかに、いわゆる表現力といわれる「演技構成点」があり、2つの合計点で競う。スピンやステップの出来は「演技構成点」にもかかわってくるため、基礎点が低いから磨かなくていいというわけではもちろんない。しかし、技術点を上げるには、高難度ジャンプを成功させるのが最も確実であることは、現行の採点方法を見れば一目瞭然なのだ。

 現行ルールを“4回転偏重”と表現することもできるだろう。しかし、このルールには理由と背景がある。フィギュアスケートに詳しいスポーツライターはこう解説する。

「2010年のバンクーバーオリンピックで、4回転を一度も飛ばなかったライサチェック選手が金メダルを取りました。ショートでもフリーでも4回転を決めたプルシェンコ選手が、演技の質と確実性を重視したライサチェック選手に負けたのです。この結果にプルシェンコ選手が抗議し、“4回転論争”が起きました。以降、4回転をはじめとする高難度ジャンプをもっと評価しようという流れが強くなったのです」
ソチ冬季五輪2014のエフゲニー・プルシェンコ(ロシア)=2014年2月6日、ロシア・ソチのアイスベルク・パレス(大里直也撮影)
ソチ冬季五輪2014のエフゲニー・プルシェンコ(ロシア)=2014年2月6日、ロシア・ソチのアイスベルク・パレス(大里直也撮影)
 以後、男子は4回転時代に突入。いまや4回転を3本も4本も飛ばなければ、メダルは望めない時代となった。とはいえ、挑戦にリスクはつきものである。金メダルを狙う男女のエースがこの時期にケガを負ったのは、選手本人たちはもちろんのこと、ファンにとっても辛い現実だ。

◆平昌後のルール改正で、ジャンプに傾きすぎた現状を是正する

 では、ジャンプ偏重を見直すべきなのか。最終的には選手それぞれが自らの進むべき道を選ぶだろうし、ファンとしては、それを応援したい。ただし、ルールとしては、一つの方向性が示されつつある。

「平昌五輪後に、ルール改正が検討されています。改正案の中には、4回転ジャンプの基礎点を下げる、というものがあります。国際スケート連盟は、技術面と表現面のバランスを取りたいようで、端的に言えば、ジャンプに傾きすぎた現状を是正するためのルール改正となるのではないかと見られています」

 羽生選手らの挑戦によって、フィギュアスケートは技術的に、大いなる進化を遂げた。しかし、挑戦がケガを増やし、選手生命を短く、あるいは危うくするものであれば、何か歯止めは必要なのかもしれない。接触障害に苦しむ女子選手の報道も記憶に新しい。ルールは時代によって変化し、見直され、時に寄り戻しがあるものだ。フィギュアスケートブームが続く日本でも、選手個人の挑戦に対して称賛・批判をするだけではなく、ルールについての議論が起こってもよいのではないか。

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