だから、オリンピックに出場する選手の誰に注目してほしいというのは難しい。先ほどのネックレスの例で言うならば、ハリー・ウィンストンのネックレスも、カルティエのネックレスも、ブシュロンのネックレスも……とどのネックレスにも目を奪われる。だからあげればキリがない。どのネックレスが好きかも人によって違いますが、私は人の好みにまで立ち入るつもりはないですし。

――選手は人生をかけて挑むわけですからね。

高山:実は、私は格闘家の友人が多く、たまに招待してもらうので、観に行くことがあるんです。ルールもいまいちわからず、ましてやジャッジたちがどうやって採点いるかなんてまったくわからない。でも、彼らの熱いものを感じます。要するに、生き様が発光している様を観たい気持ちがあるんでしょうね。生き様を発光させられる人なんてそうはいません。スポーツ選手のなかでも選ばれし人たちがオリンピック選手になる。そういったフィギュアスケーターたちの生き様をぜひ観てもらい。
『羽生結弦は助走をしない 誰も書かなかったフィギュアの世界』(高山真、集英社)
『羽生結弦は助走をしない 誰も書かなかった
フィギュアの世界』(高山真、集英社)
 またもう中年だから新しいスポーツを観るのは遅いと思っている方がいれば、もったいないことだと思います。新しい喜びや感動に対し、新鮮で謙虚な気持ちでいることは、新しいスポーツを好きになること以上に大事なのかもしれません。

 フィギュアスケートを観て、合わないと思うならそれでいいと思うんです。人それぞれ好き嫌いがあって、合う合わないがあって当然ですから。ただ、ほんのすこしでも面白いと思う気持ちがあるのならば、そのプリミティブな感情にフタをする必要はないし、その感情に少しでもポジティブな影響を、この本が与えられたのだとしたら万々歳かなという気がしますね。ただし、あくまでも「私のツボ」なんですけどね。

――早くも3刷りとかなり売れていると聞いていますが、反響はどうですか?

高山:この本を読みながら、映像を見返すと新しい発見があるというご意見や、いままで2Dで見えていたものが、この本を読んで3Dに見えるというご意見をいただき本当に嬉しいです。私の本が、読者の方々がお持ちの「好奇心」と、ちょっとだけでも何かを分かち合う時間が持てたのかな、と思える……。それが本当に幸せです。

ほんだ・かつひろ ライター。1977年横浜生まれ。2009年よりフリーランスライターとして活動。政治、経済から社会問題まで幅広くカバーし、主に研究者や学者などのインタビュー記事を執筆。現在、日刊サイゾーなどに執筆中。ブログ:http://golazo-sala.cocolog-nifty.com/pinga/