舛添要一(前東京都知事)

 北方領土、尖閣諸島と並んで、竹島をめぐる韓国との係争はわが国の「領土問題」である。韓国では「独島(トクト)」と呼称し、日本との間で領有権が争われているが、現在は韓国が占拠し実効支配を続けている。

 問題の解決は容易ではない。少し「へそ曲がり」の考え方かもしれないが、幾つかの視点を提示してみたい。今の日本では「竹島は日本固有の領土である」と主張して「徹底的に韓国と戦うべきだ」と言わない限り、今の政府方針と違えるし、世論からも袋だたきに遭うことは必定である。

 一方、韓国ではこの主張の「竹島」を「独島」に、「日本」を「韓国」に言い換えて、『独島はわが地』という歌を歌いながら激しく主張する。そうしなければ非国民扱いである。
2018年2月、韓国・江陵で行われた北朝鮮の「三池淵管弦楽団」の公演で歌唱する団員。公演では、玄松月楽団長が「独島もわが祖国」と北朝鮮歌謡の替え歌を披露した(共同)
2018年2月、韓国・江陵で行われた北朝鮮の「三池淵管弦楽団」の公演で歌唱する団員。公演では、玄松月楽団長が「独島もわが祖国」と北朝鮮歌謡の替え歌を披露した(共同)
 このように両国とも自らの主張を譲らない「ガチンコ勝負」となっており、解決の見通しは全く立たない状況である。問題なのは、両国政府とも竹島(独島)が自らの領土であることを主張するのに都合の良い資料を持ち出したり、牽強(けんきょう)付会とも言える恣意(しい)的な資料解釈を行ったりして、不利になる資料には一切触れないという態度を取っていることである。

 そこで第一に必要なのは、日韓双方が最新の歴史学に依拠した正確な事実認識からスタートすることである。一般の国民はもちろん、有識者といわれる人々も、竹島の歴史についてあまりにも無知なことが多い。意図的な資料解釈もまかり通っている。

 そのような中で、新書で簡単に入手して読める名古屋大の池内敏教授の『竹島-もうひとつの日韓関係史』(中公新書)を勧めたい。この本は文献に基づき、また多角的な資料分析を行って、日本政府と韓国政府の公式見解の問題点を摘出している。

 例えば、江戸時代から竹島は日本領だったのか。池内氏の著書によると、徳川幕府は「竹島(現在の鬱陵島)」と「松島(現在の竹島)」は一体のものとして認識しており、二島とも朝鮮のものだと考えていたとある。ちなみに、日本が先占の事実により竹島を自国の領土に編入したのは、日露戦争中の1905(明治38)年1月のことである。むろん、この手続きは国際法にのっとった正当なものである。