さて、このアニメの主人公はなぜアシカだったのか。これには、意外と深い来歴がある。実は、日本ではまったく知られていないが、韓国では「独島周辺のアシカを絶滅させたのは日本だ」という都市伝説が語り継がれており、日本糾弾のネタとして、しばしば使われている。韓国での報道を総合すると、「19世紀末まで、鬱陵島や独島周辺にはアシカが生息していたが、1904年から1911年まで日本が独島周辺で1万5000匹ものアシカを乱獲した。乱獲は1950年代まで続き、その結果アシカは絶滅した」というのである。

 また、ごく少数残っていたアシカも1950年7月に独島がアメリカ軍の砲撃演習の目標となったため絶滅した、ということになっている。韓国はなぜそこまでアシカにこだわるのか。それは、日本が竹島(独島)に対する領有権を主張する根拠の一つが「日本人による竹島を拠点としたアシカ漁」だったからである。つまり、1905年に竹島(独島)が島根県に編入される以前から、日本人がこの島を根拠地としてアシカ漁を行っていたことは、既にさまざまな資料によって立証されている。これに対して韓国は説得力のある反論ができないでいる。そこで、日本の主張を逆手にとって「日本が独島のアシカを乱獲し絶滅させた!」と主張し、日本を糾弾するネタとして利用しているのである。

 こうした火種があったところに、2014年12月、日本の内閣官房領土・主権対策企画調整室が、隠岐の漁師と竹島のアシカとの関わりを描いた絵本「メチのいた島」(「メチ」とは現地の方言でアシカのこと)の読み聞かせ動画を公開し、これが韓国を刺激した。韓国はこれに対抗して竹島にアシカの像を置こうとしたが実現せず、2015年8月になって竹島の船着場近くにアシカのレリーフを設置している。
竹島と日本人と関わりを描いた絵本「メチのいた島」を出版した杉原由美子氏
竹島と日本人と関わりを描いた絵本「メチのいた島」を出版した杉原由美子氏
 また、韓国の海洋水産部は2014年9月、「滅亡したアシカの生息を復元する」という事業計画を公表している。もちろん、これは単なる自然保護が目的ではなく、「韓国政府が自国の領土である独島の生態系復元に努力している」ということを国際社会にアピールし、領土紛争で有利な地歩を確保しようとする下心からである。「独島守備隊・カンチ」の企画が立案され、製作が開始されたのは、まさにこの時期だったのである。