その後、米国各地でUFOの目撃談が相次ぐようになる。当時は冷戦がまさに起ころうとしつつあるときだ。第2次世界大戦後、脅威となっているのは旧ソ連であった。UFOは宇宙人の乗り物としてではなく、旧ソ連、あるいはひょっとしたらいるかもしれないナチスの残党による乗り物としても捉えられたのである。

 高まる脅威論を受けて、米空軍はUFOの調査に乗り出す。48年にはUFO調査のための機関「プロジェクト・サイン」が設置された。その後「プロジェクト・グラッジ」と改名、52年には「プロジェクト・ブルーブック」として再編され、69年まで調査が行われた。

 しかし、最終的には「アメリカ合衆国の脅威となる証拠はみつからない」として、プロジェクトは解散することになった。一方ではこのような経緯が「政府が何かを隠している証左」として捉える向きが多かったことも確かである。

 UFOが宇宙人と本格的に結び付けられるようになった大きな理由としては、50年代に活躍した作家、ドナルド・キーホーの活躍が挙げられる。彼が1949年に出版した本『空飛ぶ円盤は実在する』では、空飛ぶ円盤=UFOは地球外からやってきた生命体、つまり宇宙人の乗り物であり、政府はそれを隠しているという仮説を提唱した。つまり、今に続くUFO物語のプロットがこの本で完成されていたのである。キーホーはその後も何冊ものUFO関係の本を著し、米国の大衆に「UFO=宇宙人」の構図を植え付けていく。

 61年には「ヒル夫妻誘拐事件」が発生する。休暇先のカナダから自宅があるニューハンプシャー州に戻るため車を運転していたベティとバーニーのヒル夫妻は深夜、奇妙なものを目撃する。自分たちの車を追いかけてくる光体である。やがてその物体は車の前に回りこんだと思うと、彼らの記憶は途絶え、気がついたらその地点から60キロも離れた場所にいたのである。彼らが催眠術師によって取り戻した記憶によると、そのとき、彼らはなんと宇宙人に誘拐され、UFOの中で身体検査を受けていたというのである。
(iStock)
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 この事件によって、UFOに対する米国人の認識は一変した。それまでは単に空を飛び回る不思議な物体であったものが、そこに登場する宇宙人たちが人間に対して、身体検査であれメッセージの伝達であれ、何らかの働きかけを行う存在へとランクアップしたのである。

 米国ではこれ以降「宇宙人に誘拐され、身体検査を受けた」と主張する人々が激増することになる。さらにそれは、米政府がパニックを恐れ、そのような宇宙人の地球への訪問を隠しているという陰謀論へと発展していくのである。