米第34代大統領、ドワイト・アイゼンハワー
(Wikimedia Commons)
 70年代から80年代にかけては、この陰謀論の完成の時期ともいえる。映画の世界でも取り上げられ、『未知との遭遇』や『E.T.』といった大ヒット映画により、UFOは私たちにとって本当に身近な存在となった。テレビ番組でも盛んに取り上げられるようになり、まさにUFOブームといってもよい状況が訪れる。その最高潮が80年代後半に起きた「マジェスティック・トゥエルブ(MJ-12)事件」であろう。

 あるテレビ番組制作者のもとに匿名で届けられた文書に、MJ-12と称するグループについての記述があったことから、この事件は始まる。その文書は52年、次期大統領に選出されたアイゼンハワー氏にUFOに関する情報を申し送りするために書かれたトップシークレットだった。12人からなる最高機密グループ(MJ-12)の存在や、表沙汰にされていない数多くのUFO墜落事件、そしてその際の宇宙人回収などの経緯が書かれていた。米国中をセンセーションに巻き込んだMJ-12文書であったが、最終的にニセ文書と断定され、急速に収束していく。

 そして90年代に入り、あれほど世間を賑(にぎ)わせていたUFOブームは次第に、しかし着実に下火になっていくのである。その理由はいくつか考えられる。一つは冷戦の終結だろう。ソ連という敵がいなくなったことで軍事予算も縮小され、UFOと誤認されるような新型航空機の開発も少なくなった。

 UFOについての情報があまりにセンセーショナルになりすぎたということもあるだろう。前述のMJ-12の内容があまりに衝撃的だった割に、ニセ文書であることがすぐに明らかになったことで、いってみれば世間が期待する「UFOバブル」があっという間に弾けてしまったということもあると思われる。また、「宇宙人は間もなく姿を現す」「もう少しで米政府はUFOに関する文書を全面公開する」といった噂が飛び交っては結局そうならなかったことも、人々を失望させる元となっていった。

 インターネットの普及やコンピューター技術の急激な向上も、UFOブームの沈静化に一役買ってしまったと思われる。ネットにより人々が多くの情報を得るようになると、テレビなどで放映されていた情報の「真の姿」が明らかになり、多くの人が本当のことを知るようになってしまった。衝撃的なUFO写真や映像なども、実はコンピューターで加工したものであるというケースが多数存在し、そのような解析をコンピューターで行う技術も急速に発展した。その中で、多くの人がかつてなら信じたであろうUFO関連の写真や映像も、「またどうせニセモノだろう」と疎んじられるようになっていった。

 また、50~70年代に盛んにUFOや宇宙人について喧伝(けんでん)していた人たちが高齢化し、一線から退いていったことも大きいだろう。かくして、21世紀に入ると、あれほど盛り上がっていたUFOや宇宙人についての話はすっかりと下火になってしまったのである。