竹内薫(サイエンス作家)

 2017年の暮れ、米国防総省にAATIP(Advanced Aerospace Threat Identification Program)という計画があることが判明した。日本語なら「先端航空宇宙脅威同定計画」とでも言うべきか。舌をかみそうな名前だが、要するに、人類より科学技術が進んだ宇宙人が空から地球にやってきていて、それが脅威なのかどうかを調べるプロジェクトということらしい。

 この計画は2007年から2012年まで続き、今でも別の仕事を兼務する係官が宇宙人の脅威について調べているのだという。つまり、独立の予算計上はやめたが、ひっそりと調査は続行中ということらしい。

 AATIPは、5年にわたり、毎年約20億円の予算を使って遂行された。大金といえば大金だが、そもそも米国の国防予算は60兆円以上なので、総額からすれば微々たるものだとも言える。それにしても、なぜUFO(未確認飛行物体)探しに米政府が公的資金を注ぎ込んでいたのか。

 いきなり脱線するが、年末に『バトルシップ』というSFアクション映画を見た。NASA(米航空宇宙局)が宇宙人と交信しようと、ゴルディロックスゾーン(生命生存可能領域)にある系外惑星に強い電波を送ったら、彼らは地球にやってきた。だが、NASA上層部の予想とは逆に、彼らは敵対的で、どうやら地球を侵略しに来たらしい。地球の科学技術をはるかにしのぐバトルシップを持つ彼らに立ち向かうのは…という痛快アクションで、大いに楽しめた。

 だが、何光年も何十光年も先から「すぐ」にやって来られるということは、少なくともアインシュタインの重力理論を超える理論を知っていて、宇宙のトンネル「ワームホール」を自在に制御することができることを意味する。人類が同じ科学技術レベルに達するのには、何千年もかかることだろう。

 映画ではうまく敵を撃退したが、彼らがすぐに地球にやって来られるという時点で、本当は地球人になすすべがない。映画では宇宙人と地球人の関係をコロンブスとアメリカ先住民の関係に例えていたが、発達した宇宙文明が未開の地球文明をどう扱うかも、実際のところ、皆目見当がつかない。
撤去を免れることが決まった米ニューヨーク市にある探検家コロンブスの像(UPI=共同)
撤去を免れることが決まった米ニューヨーク市にある探検家コロンブスの像(UPI=共同)
 だから、もしかしたら彼らはすでに地球を訪れているかもしれない。しかも、巧みに「超ステルス技術」を駆使し、人類の観測網に引っかからない可能性は否定できない。来ているのは軍人ではなく、科学者だったり、場合によっては観光客かもしれないが。

 そんな中、2017年10月19日に「オウムアムア」という小天体を天文学者たちが発見した。ハワイ語で「遠方からの最初の使者」という意味の小惑星は、長さ400メートルの「ロケット」のような形をしていたため、世界中のUFOファンが狂喜乱舞した。通常の小天体は多かれ少なかれ楕円(だえん)軌道を描いている。その楕円が細長くなることはあっても、楕円は楕円なので、太陽系内にとどまっている。