小野展克(名古屋外国語大学教授)

 政府は2月16日に日銀の黒田東彦総裁の続投を国会に提示した。黒田総裁は「アベノミクス」の象徴的な存在であり、安倍晋三首相の決断をまずは支持したい。ただ、異次元緩和の出口を探る中で、「サプライズ」と「矛盾」を黒田総裁がどう説明できるかが大きな課題となることを指摘しておきたい。

 森友、加計学園問題など安倍政権の運営力に疑問符がつく中、高い支持率が続いている背景には、政権の誕生以降、円安、株高、失業率の低下を実現したことが大きい。こうした経済好転の背景には、黒田日銀が導入した異次元緩和と称される、大胆な金融政策の貢献があるだろう。

 安倍首相の経済政策であるアベノミクスは、「金融政策」「財政政策」「成長戦略」の3本の矢で構成されている。しかし、財政の大盤振る舞いで景気回復を目指す政策は、これまで多くの政権で採用されており、特に目新しさはない。成長戦略も規制緩和等での成果は乏しく、経済の押し上げに大きな効果があったとは思えない。つまりアベノミクスの実像は金融政策の1本足打法であり、異次元緩和こそが、安倍政権の長期化を実現させた原動力だと考えられる。
平成30年度予算案についての衆院予算委員会に臨む安倍晋三首相=2018年2月20日、国会(斎藤良雄撮影)
平成30年度予算案についての衆院予算委員会に臨む安倍晋三首相=2018年2月20日、国会(斎藤良雄撮影)
 安倍政権の経済政策に対して世論の支持があり、市場の期待感があることを考えれば、その中核である異次元緩和を担った黒田総裁を続投させる安倍首相の判断は理解できる。

 しかし、2期目の黒田総裁には、多くの課題があり、中でも説明力が最大の懸念材料だ。

 黒田総裁は就任直後の2013年4月と2014年10月の2度にわたり、大胆な金融緩和を導入、2016年1月にはマイナス金利の採用に踏み切った。

 最初に黒田総裁が導入した金融緩和は、消費者物価の前年比上昇率2%の「物価安定の目標」を掲げ、これを2年程度で実現するため、長期国債・ETF等の保有額を2年間で2倍に拡大し、長期国債買い入れの平均残存期間を2倍以上に延長する内容だった。いずれも市場やメディアの予測を超えたスケールで、「黒田バズーカ」と称された。

 それに続く、年間の国債の購入額を80兆円規模に拡大する「黒田バズーカ第2弾」も、マイナス金利の導入も、市場やメディアの期待を上回る形で予測を裏切っており、「サプライズ」が黒田総裁の説明手法の特徴となった。