普通の病気の場合、偽薬効果で病気が治癒した人は、偽薬だったと知っても病が再発することはないはずです。偽薬だったと気づいていない患者に「薬が品切れで処方できない」と伝えても、病が再発することはない筈です。

 しかし、「病は気から」ですから、不安が引き起こす病の場合には、そうとは限りません。「偽薬だと知っても再発しない」という点は同じでしょうが、「薬が品切れだ」と言われたら、再発してしまうかもしれません。

 さて、今回はどうでしょう。人々が既に偽薬だと気づいていて、「偽薬で病気が治癒したのだからメデタイ」と考えているのであれば、出口戦略が景気を逆戻りさせることはないでしょう。筆者は、そうであると信じています。

 しかし、人々が偽薬だと気づいていないとしたら、「異次元緩和をやめる」と宣言した途端に株やドルが暴落するかもしれません。株安やドル安は、人々の不安が引き起こす病気に似ていますから、人々の気持ち次第で再発しかねないのです。「偽薬だと気づいていない人は稀だ」と筆者は信じていますから、株やドルは暴落しないと筆者は信じていますが。
(iStock)
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 筆者を批判している人の多くは、黒田緩和が偽薬であったことを知りながらも、「市場は美人投票の世界だから、皆が下がると思うと皆が売るので本当に下がるのだ。市場参加者の多くは黒田緩和が終われば株価が下がると考えているから、黒田緩和が終わったら、本当に株価は下がるだろう」と考えているのでしょう。

 そうしたことは、起こり得ると思いますが、影響はそれほど大きくないでしょう。株価の上昇過程では、偽薬だと知らずに買っている人が大勢いて、「偽薬だと知らずに買っている人がいるから値上がりするだろう。自分も買おう」という人が大勢いて、結局皆が買ったから株価が大幅に上昇したのです。

 しかし今回は、偽薬だと知らずに小麦粉の品切れを嘆いて売る人は少ないはずです。そうだとすれば、「偽薬だったと知らずに売っている人がいるから値下がりするだろう。自分も売ろう」という人も少ないはずです。

 今ひとつ、株に関しては好材料があります。黒田緩和前は、日本経済の先行きに悲観的な投資家たちが、「割安だけども買えない」と考えていたため、株価が割安に放置されていました。それを適正水準に戻したのが黒田緩和だった、という面もあったのです。今回は、株が割高だということでもありませんから、出口戦略が暴落の引き金を引くという可能性は小さいわけです。

 そうしたことを総合的に考えれば、ドルや株が黒田緩和前の水準まで値下がりすることは考えにくいでしょう。ある程度下がった所で割安感からの買いが出て止まるでしょう。

 ちなみに筆者は、黒田緩和の時には「偽薬効果を信じている黒田教信者が買うだろうから株価は上がるだろう。自分も買おう」という美人投票的な行動をしましたが、今回はしないつもりです。もっとも、筆者の株価予想ほど当てにならないものはありませんので、読者各位は筆者を真似することのないように。投資は自己責任ですから(笑)。