さて、ここからより強力な金融政策姿勢を打ち出し、さらには財政政策についても拡大志向の総裁を望む声が出るのは自然なことだろう。しかしながら、後者については無い物ねだりの感を否めない。中央銀行総裁は、財政政策に関していかなる権能も有していない。仮に日銀総裁が大規模な財政出動を主張したところで、政府がそれを採用する理由はないし、逆もまた真(しん)である。財政政策姿勢については政府の方針にこそ検討・批判を加えるべき話だ。
2018年2月、衆院予算委で答弁する日銀の黒田総裁。右は安倍首相
2018年2月、衆院予算委で答弁する日銀の黒田総裁。右は安倍首相
 より金融緩和に積極的な人選を望む声についても、その道は容易ではない。確かに、黒田総裁よりも積極的な金融緩和拡大を主張する論者は日銀内外に存在する。しかし、黒田総裁自身が示した「グローバルな視点と実践的な能力と理論的な分析」という中央銀行総裁の資質、中でも日本銀行という巨大な官僚組織を御していく力を併せ持つ者となると具体的な名前を挙げることは難しくなろう。

 これとは逆に、目標達成ができなかったのだから金融緩和を収束させて出口戦略に向かう、つまりは早期に金融引き締めに転じる総裁を選ぶべきだとの議論もあるが、これは顧みるに値しない。株・為替・雇用はもとより、長くマイナス域に沈んでいた物価上昇率を曲がりなりにもプラス値が継続する状況まで改善した実績を無視することはできないはずだ。

 これらの実績を、米国経済の好調さに支えられた偶然の結果だとする主張もある。しかし、すでに米経済の好調が明確になっていた2013年初頭においても、金融緩和に批判的なアナリストの多くが円安は進んでも90円台、株価上昇も1万1000円から1万2000円程度であると予想していたことを忘れてはならない。米国の好景気は日本経済にとって強力な追い風ではあるが、その追い風を生かすためにも継続的な金融緩和の果たした役割は大きい。90年代や2000年代前半にも米国の経済状況は良かったが、近年ほどの資産価格や雇用の改善は生じていない。

 より素晴らしい総裁はどこかにいるのかもしれない。しかし、その人を発見することはできなかった。現在行われている金融緩和の継続性への信認を傷つけず、それでいて2期目に訪れるかもしれない2%目標達成時に市場とコミュニケーションを採りながらの政策変更を進める-そのための適任者と考えると、黒田総裁の再任は、現時点では妥当な人選だと判断せざるを得ないのかもしれない。

 一方で、本来ならば事前に十分に準備すべき後継者の育成を果たせなかったことは黒田体制1期目の問題点の一つとして指摘されてしかるべきだ。そして、この後継者の育成が2期目には必須の仕事となる。ここで注目されるのが二人の副総裁だ。