というわけで、佐川氏は「順調」に行けば、あと4カ月、今年の7月にはめでたく退官し、もうすぐ先輩たちに続くことになる。となれば、ここまで沈黙してきたのだから、それを続けない理由はない。このまま「サイレンス佐川」として、長官人生の「有終の美」を飾るだろう。

 では沈黙を続けた場合どうなるか、問題はここにある。相変わらず、野党は「佐川を国会に呼べ!」と一つ覚えで政府を糾弾しているが、呼んでどうしようというのか。また「辞めさせろ!」とも言っているが、佐川氏を任期途中で辞任させることに成功したとしても、それでどうなるというのだろうか。

衆院予算委の証人喚問で、宣誓書に署名する籠池泰典氏
=2017年3月23日午後
 もし彼を国会に呼んで証言させ、「あの当時においては、文書は破棄したものという認識でした」と言われたらどうするのか。秀才答弁と言える「記憶にありません」を連発したらどうするのか。また、首尾よく退官させることに成功したとしても、安倍内閣を窮地に追い込めるだろうか。「政治任命の責任を取れ」と安倍晋三首相に迫っても、うまくかわされて終わりだろう。

 「サイレンス佐川」問題の本質は、実はこんなところにあるのではない。嘘をつこうが人を欺こうが、時の権力に不利なことは一切しない。なにしろ、今や官僚人事は内閣人事局が一手に握っている。となれば、ただただ沈黙を守る。人間としてのモラルより、官僚としての「オキテ」を優先し、真実をないがしろにする。これで「キャリアすごろく」を上がれて、生涯年収は民間サラリーマンをぶっちぎる巨額を稼げる。

 そうなると、今後の日本を背負うとされる、佐川氏と同じ優秀な子供たちはどうするだろうか。そういう子供を持つ親たちはどうするだろうか。

 小さい頃から子供たちは、「嘘をついてはいけません」「人に迷惑をかけてはいけません」と、親に言われて育つ。江戸っ子なら「嘘をついても、お天道さまはお見通し」なんて言われて育つ。しかし、大人になってみると、親たちが言っていたことが嘘だと分かる。嘘をついた方が人生は成功する。正直に生きるとバカをみると知って、子供たちは深く絶望するのだ。

 「サイレンス佐川」問題は、まさにこの典型だ。「嘘をついた者勝ち」という、日本社会の成功法則を決定づける出来事になろうとしている。なにしろ、日本国の最高意思決定機関、国会においては、嘘はつき放題、嘘をついた方が圧倒的にトクできるのである。

 佐川氏は、この法則通りに生きているのだから、誰が彼を糾弾できるだろうか。その意味で、このまま逃げ切り成功となれば、佐川氏は日本社会に「偉大なる遺産」を残すことになる。

 結局「嘘をついたら損をする」「人生は失敗する」、こういうシステムを構築しない限り、佐川「嘘つきはトク」問題は解決しない。彼が辞任しようと安倍内閣が崩壊しようと、問題は続いていく。