思うに、国会審議における答弁で嘘をついても、なんら罰則が存在しないというのは、本当に不思議である。もちろん、「議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律(議院証言法)」では偽証罪が規定されている。しかし、これはあくまで「証人」として国会に呼ばれた人間にだけ適用され、この法律にのっとって「宣誓した証人」が虚偽の陳述をしたときに、10年以下の懲役を受けることになっている。

 すでに、森友問題発覚時に何度も報道されたように、「参考人招致」による参考人は、出頭が任意で嘘をついても罪に問われない。また、宣誓をしなければ、罪に問うことすらできないのだ。まして、国会に呼ばれた官僚は、議員が事情を聴くだけだから、嘘などつき放題である。

 この「嘘をつき放題」という文化は、東アジア特有のものである。中国でも韓国でも歴史はねじ曲げられ、真実よりも、何十回、何百回と繰り返された嘘が優先する。こうしたことに、私たち日本人は激しく反発する。だが、佐川氏のような人間が生まれてくる日本社会が中国や韓国より上と言い切れるのだろうか。

 欧米社会は嘘に対して、日本よりはるかに厳しい社会である。偽証罪は重罪である。例えば、「パワーエリート」ヒラリー・クリントン元国務長官が、時代錯誤の「ツイッターおやじ」ドナルド・トランプ氏に大統領選で負けた理由の一つは、嘘をついたからだった。彼女は、2015年10月の米下院の公聴会で、私的なアカウントでメールを送受信していたことを問われ、「メールに国家機密は含まれていなかった」と証言した。しかし、その後、国家機密が含まれていた事実が次々と明らかになって、「嘘つきヒラリー」として国民に嫌われることになってしまった。
2016年10月、米大統領選のミズーリ州での候補者討論会に出席した民主党のクリントン氏(右)と共和党のトランプ氏(AP=共同)
2016年10月、米大統領選のミズーリ州での候補者討論会に出席した民主党のクリントン氏(右)と共和党のトランプ氏(AP=共同)
 米国では、何事も「神の前」で宣誓してから行う。神に対してだけは、嘘をついてはいけないのだ。しかし、日本は神が「八百万」(やおよろず)もいるので、神に誓うなどということは有名無実になっている。

 しかし、それでもなお国会では、証人であろうと参考人であろうと官僚・大臣だろうと、答弁に立つ人間にまずは「宣誓」させるべきだと私は思う。「私は、この席で決して嘘をつかず、真実のみを述べることを誓います」と言わせるべきだ。

 これは宗教儀式ではない。米国においては、キリスト教徒ばかりではないので、「神に誓う」としても聖書ばかりとは限らない。コーランなどの他宗教向けの宣誓文から無神論者向けの宣誓文までちゃんと用意されている。

 だから日本でも答弁前には宣誓文を読ませ、それを記録として残すようにすべきだ。人間というのは、一度誓ったことを破ることに相当の覚悟がいる。ましてや、善良な人間であれば、そんなことは絶対にしないだろう。