小笠原誠治(経済コラムニスト)


 確定申告の時期ということもあり、森友学園問題をめぐって佐川宣寿(のぶひさ)国税庁長官に対する批判の声が高まっている。だが、佐川氏の対応はといえば、自宅には帰らずもっぱらホテルから役所へ、そして役所からホテルへ戻るという生活を余儀なくされているという。面白おかしくいえば、マスコミの追及を避けるために佐川氏は「逃亡生活」を送っていることになろう。

 では、なぜ普通の生活、つまり、自宅と役所を往復する生活が送れないのか。それはマスコミ関係者が彼をずっと追いかけ回すからだが、そもそもなぜマスコミが佐川氏を追いかけ回すのかと言えば、彼が財務省理財局長当時、国会で証言したことが実は虚偽であったのではないか、とメディアが思い始めているからだ。

 例えば、佐川氏は理財局長当時、森友学園の理事長だった籠池泰典氏側と事前交渉をしたことはない、価格を示したこともない、関係資料は廃棄したと断言していたが、その後明らかになった事実からすれば、いずれもかなり疑わしい。さらに言えば、佐川氏のことを週刊誌が取り上げたりするものだから、余計に関心が集まる。

 いずれにしても、国民の多くは、森友学園問題や加計学園疑惑に関して今でも納得できていないはずだ。いや多くの国民は、佐川氏が正々堂々と証人喚問に応じるべきだと思っているのではないだろうか。

 もし、本当に間違ったことをしていないのであれば、国民に率直に説明すればいい。もっと言えば、そもそも関係書類は廃棄してしまったとは、どういうことなのか。税務署は領収証を紛失したら経費として認めてくれないのに、わが国の徴税トップたる佐川氏は、書類がないからと言ってこのまま説明責任を見逃してもらえるのか。
財務省理財局長当時、参議院予算員会で答弁する佐川宣寿氏=2017年3月
財務省理財局長当時、参議院予算員会で答弁する佐川宣寿氏=2017年3月
 言うまでもなく、納税者の側に立てば、全く納得がいかないのが、佐川氏の一連の言動である。筆者も、個人的には佐川氏の言い分には全く納得がいかず、証人喚問に応じる義務があると考えている。

 ただ、現実問題として、佐川氏が率直に事実を述べる可能性があるかといえば、それは恐らくないであろう。その理由は、それが良いか悪いかの判断は別として、高級官僚の人事権は今や官邸にがっちりと握られているからである。

 仮に官邸の意向に反したことを佐川氏が証言するとすれば、辞表を覚悟しなければできないだろう。それに、正直にありのままを述べれば安倍晋三総理の進退にも当然何らかの影響が及ぶであろうことも容易に想像できる。また、財務省としてこれまで述べてきたことも整合性が取れなくなってしまう。

 さらに、大臣秘書官などの経験もある佐川氏の立場からすれば、政治家の不当な関与など、公にできないことは他にもたくさんあるではないか、という思いもきっとあるのだろう。