なぜ、この問題に限って正直にモノを言わなければならないのか。なぜ、自分だけが悪者扱いされなければならないのか。それに前文部科学省事務次官、前川喜平氏のケースをみても分かる通り、正直に話をしても自分の得になることは何もない、という打算だってあるだろう。

 そんな「逃亡生活」を続ける佐川氏だが、安倍総理は「官僚の鑑」として賞賛する。だから、佐川氏にとっては他の選択肢がなくなるわけである。結局、そういうことなのだ。民間企業の粉飾決算、あるいは品質偽装問題にしても、組織の一員が真実を語ることがいかに難しいか、われわれは薄々感づいている。宮仕えの経験、あるいはサラリーマンの経験があれば、誰だって少しは想像がつく。

 だからと言って、籠池氏側だけに責任をなすりつけた森友学園問題が、このまま忘れ去られるとはとても思えない。民間企業の偽装事件が、どんなに時間がかかっても、いつかは必ず表面化することもわれわれは知っている。

 だとすれば、今は関係者が森友学園への国有地売却の件で正直にモノを言うことができなくても、いずれその機会が訪れると考えるのがフツーである。というより、佐川氏が「逃亡生活」を余儀なくされていること自体が、真相を示唆しているとみればいい。もし、やましいことがないのであれば、なぜコソコソしなければならないのか。加えて、安倍総理の国会答弁をみても、疑惑はますます深まっていると考えるのが限りなく常識的である。

 誰もが承知しているように、昨年の今ごろ、安倍総理は自分や昭恵夫人、あるいは自分の事務所が国有地売却にかかわっていることが明らかになれば、自分は総理の座を辞するだけではなく、国会議員も辞めるとまで言い切っている。仮にそうした事実が明らかになったとしても、はたして総理を辞任する必要があるのか、本来なら即断は難しいはずだが、一歩も二歩も進んで辞めると明言したのは、他ならぬ総理自身である。
参院予算委員会で安倍晋三首相(左)と話す麻生太郎副総理兼財務相=2018年3月(斎藤良雄撮影)
参院予算委員会で安倍晋三首相(左)と話す麻生太郎副総理兼財務相=2018年3月(斎藤良雄撮影)
 さらに、この問題に関して言えば、昭恵夫人付きの政府職員が財務省に籠池氏への国有地貸し付けに関して照会した事実がその後明らかになったが、この事実一つをみても、少なくとも昭恵夫人側の関与はあったと言わざるを得ない。しかし、最近の総理の言い訳を拾ってみると、昭恵夫人付き政府職員から財務省へのファクスによる照会は、国有地の貸し付けに関するものであって、国有地の売り払いに関するものではないから根本的に異なる、ということになるらしい。

 だが、誰がそのような無理筋の論理に納得するのか。というのも、国が貸し付けにしたのは、即金で購入するお金がすぐには準備できないからという籠池氏側の事情を考慮した結果であり、また、その貸し付けも将来の買い取りを前提にしていたものであり、総理の説明とは全くの真逆である。

 佐川氏が、どれほど自宅に帰らない生活を続けようと、はっきり言って、それは佐川氏の自由である。そして、安倍総理に極力迷惑をかけたくないと考えるのも彼の自由である。しかし、異常な「逃亡生活」がむしろ疑惑への関与を疑わせる。メディアも疑惑の当事者が逃げるから追い回す。そして、また追い回されるからさらに逃げ続ける。

 安倍総理も「印象操作」で国会を乗り切ろうとするから野党の追及がいまだ止まないのである。そして、野党の追及が続くから、また、のらりくらりと追及をかわそうとする。こうしてみると、2人の「逃亡劇」はまだまだ続きそうである。