岡崎研究所

 中国共産党大会が終わると普通、政局は安定しますが、今回は少し事情を異にしているようです。その“台風の目”の一つが王岐山の動向です。習近平、王岐山に好意的すぎる嫌いはあるが、香港のサウス・チャイナ・モーニング・ポスト紙の王向偉・元編集長が12月2日付けの論説で、それについての分析を書いています。要旨は次の通りです。
中国全人代に臨む習近平国家主席(左)と王岐山・前共産党中央規律検査委員会書記=2018年3月5日、北京の人民大会堂(共同)
中国全人代に臨む習近平国家主席(左)と王岐山・前共産党中央規律検査委員会書記=2018年3月5日、北京の人民大会堂(共同)
 第19回党大会とそれに続く一連の人事において、王岐山の処遇が注目を集めた。習近平の権力強化は一層進んだにも関わらず、王岐山は政治局常務委員に留任せず、王の引退は海外に驚きをもって受け止められた。

 しかし、SCMP紙が報じたところによると、王岐山は依然として政治局常務委員会の重要会議に参加し続けている。この処遇は異例であり依然として王が政治的影響力を有していることを示唆している。王は来年3月の全国人民代表大会で国家副主席に就任するとも言われているが、これは形式に過ぎず、政治局常務委員会の会議への実質関与こそ、既存の定年や任期に関する不文律を犯すことなく、習と王との今後5年間の協力関係を可能とする上手なやり方だ。

 2012年以降、王岐山は習近平の権力確立に大きく貢献した。王は、党の非公式な定年ルールに従えば引退ということになる。習近平に対し、そのルールを破って王を留任させる働きかけがかなり前からあったが、結果として、習は他の派閥からの反感を避けるためにそれに同意しなかった。

 習近平はそれでも王岐山を残しておくため、政治的な工夫と前例を踏まえた慎重な考慮を経て、王の新しい役職を用意した。過去に、国家副主席が政治局委員でなかった例は80年代の王震と90年代の栄毅仁の2件がある。また、1980年代後半に国家主席だった楊尚昆は政治局委員でありながら、政治局常務委員会に参加できる特権を与えられていた。

 後知恵的に考えると、王岐山の新しい役職を予期させる出来事は党大会前の9月の2つの会談であった。シンガポール首相リー・シェンロンとの公式会談とスティーブン・バノン(前トランプ大統領首席戦略官)との私的会談である。リーと会ったとき、王は会談の許可を求めたと話した。おそらく習近平の許可であろう。バノンとの会談についても同様であろう。国家副主席は基本的に形式的な役職だが、王にとり各国の指導者と会うために必要な公的な肩書きを与えるものである。