また、この2校は校風も全く異なる。

 桜蔭はポジティブな意味で「型にはまったエリート養成校」である。「小学校時代はやんちゃで面白い子だったのに、桜蔭に入ったら型にハマったおとなしい子になった」「親や兄弟から“おまえは桜蔭に行ってつまらない子になった”と言われる」と話す桜蔭卒業生は多い。だが、これは悪いことではない。型にはまることはイコール社会化であるからだ。

 アメリカのエリート大学には世界各国から優秀な学生が集まるが、そこでは徹底して「型にはめる」しつけがされる。頭脳陰自意識が肥大している若者をしつけることで、社会化させていくのだ。

 それを中学高校の段階でやっているのが桜蔭なのである。お茶の水大学の同窓会が発足した女子校であり、「昔ながらの女子教育の伝統が残っている学校」(都内塾関係者)である。カリキュラムには斬新さはない。修学旅行は東北で、その前には松尾芭蕉『奥の細道』を数か月にわたって読ませる。また、礼法の時間もある。ただ、中学の頃から数学の授業だけは速く進む。東大や国立医学部などの難関を狙う場合、他の科目は高校に入ってからでも間に合うが、数学は中学から先取りしないと間に合わない。そのあたりはちゃんと押さえている。

 一方で、女子学院はプロテスタント校らしく、自由奔放で個性的な生徒が集まる。制服はなく、ミニスカートだろうが金髪だろうがどんな格好でも許される。ただ、靴箱にちゃんと靴をしまうのは決まりなのでロングブーツは避ける生徒もいるそうだ。カリキュラムは大学授業対策はしないが、英語でディベートをさせたり、音楽で特殊な発声法を学ばせたりと独自性がある。積極性や自主自立を促す教育をし、卒業生は「気が強く、離婚率が高い」という都市伝説もしばし聞く。

 このように入試傾向も校風も真逆であろうと、首都圏の優秀層の小学生女子は、この2校を両方受け、どちらかに行きたいと願うのだ。

「上昇志向が強い子たち」


東京大学安田講堂
 桜蔭や女子学院の生徒が通う塾の関係者が、東大や国立大学医学部を狙って猛勉強をする彼女たちのことを「上昇志向が強い子たち」と表現した。

 政府が「女性活用推進」を唱えるようになって以来、日本のジェンダーギャップ指数がしばし取り上げられる。ジェンダーギャップ指数というのは世界経済フォーラム(WEF)が毎年公表している社会進出における男女格差を示す指標である。日本は国会議員や企業管理職での格差があり、2014年は142か国中104位であった。

 なぜ、日本のジェンダーギャップ指数は低いのか。大きな理由として、日本の女性は高い教育を受けていても、社会的な地位を高めるよりは、仕事の質や家庭や友人関係に健康を優先させる傾向が強いからではないだろうか。

 だが、一方でパワーエリートを目指す女性はいて、彼女たちの戦いは小学校時代から始まっている。そのパワーエリート候補生にとっては、学校選びにコストパフォーマンスや利便性など関係ないのだということを、再認識させられたのが今年の「サンデーショック」である。


杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) 大学卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の『書評道場』に投稿していた文章が朝日新聞社の編集者の目にとまり2005年からライターとなる。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポタージュ記事 を書く。『女子校力』(PHP新書)『ママの世界はいつも戦争』(ベスト新書)など単著は現在12冊。