2018年03月06日 18:44 公開

米与党・共和党のポール・ライアン下院議長は5日、ドナルド・トランプ米大統領が今週中に鉄鋼とアルミニウムの輸入品に対する追加関税を導入すると表明していることについて、強い懸念を表明し、方針変更を促した。

ライアン議長のアシュリー・ストロング報道官は、「貿易戦争につながるのを非常に懸念しており、ホワイトハウスがこの計画を進めないよう求めている」とし、「新たな税制改革法が経済を押し上げており、これらの成果を危うくするようなことはしたくない」と述べた。

しかし、ライアン議長が方針再考を求める文書を出してから1時間後、ホワイトハウスでイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相と面会したトランプ大統領は記者団に対し、「我々は撤回しない」と語り、「貿易戦争になるとは思わない」と付け加えた。

サラ・サンダース大統領報道官は同日、トランプ大統領は米国がどのような貿易戦争にも勝てると「非常に自信を持っている」と述べた。

トランプ氏が発表した追加関税の方針は、世界中に波紋を広げている。世界貿易機関(WTO)は5日、貿易戦争の「最初のドミノを倒さないよう」加盟国に求めた。

ロベルト・アゼベドWTO事務局長はスイス・ジュネーブで各国の代表に対し、「いったんこの道を進み始めれば、方向転換するのは非常に難しい」と述べた。「報復合戦は我々を盲目にし、世界経済を深刻な後退に陥れる」。

トランプ氏方針の目的と理由

トランプ大統領は、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉で米国にとってより良い取り決めができれば、カナダとメキシコの製品には追加関税をしない可能性を示唆した。

トランプ氏はツイッターで、「我々はほぼすべての貿易協定で損をしている方だ。我々の友人や敵は何年も米国を利用してきた。我々の鉄鋼とアルミニウム産業は死んでいる。すまないけど変革のときだ。アメリカを再び偉大にしよう!」と述べた。(注:太字部分は原文では大文字で強調)

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/970451373681790978

トランプ氏はカナダとメキシコについて、「新たに公正な」合意に署名すれば、両国への関税は除外される可能性があると示唆した。

現在進められているNAFTAの再交渉は、成立から24年が経過した協定を時代に合わせて更新するのが目的だが、日程が終了する5日になっても、大きな前進は見られなかった。

トランプ氏は、米国の貿易赤字を批判しており、「とてもばかげた」貿易協定や政策が原因だと述べている。

トランプ大統領は先週1日、鉄鋼製品とアルミニウム製品に、それぞれ25%と10%の追加関税を課す方針を発表。さらに3日には、EU域内で製造された自動車への関税をちらつかせた。

トランプ氏は5日にも同様の発言をし、「彼ら(EU)は関税よりもひどい貿易障壁を作っている。関税だってあるんだが、関税よりもひどい貿易障壁だ」と述べた。「もし彼らが何かしようとするなら、こっちに水のように流入してくる車に関税をかけるだけだ」。

トランプ氏はツイッターで、「合衆国は『とてもばかげた』貿易協定と政策のせいで、毎年8000億ドル(約85兆円)の貿易赤字を出している。我々に付け込むほかの国に、我々の仕事や富を与えている。彼らは我々の指導者を、なんて愚かだったんだと笑っている。もうそうはさせない!」と述べている。

https://twitter.com/realDonaldTrump/status/969991653393039361

貿易戦争は米国で支持されているのか

追加関税の方針が先週発表された後、週末には一部の共和党議員から方針の再考を求める声が出ている。

多くは、他国が報復関税を課すようになり、鉄鋼・アルミニウム製品の価格が上昇すれば、昨年成立した減税の効果がそがれると主張する。

オリン・ハッチ上院議員(ユタ州選出)は、米国民がコストを負担することになると述べ、トランプ氏の「行動が、成立させようと我々が戦った成長を促進する税制改革法の効果をなくしてしまう可能性が十分あると付け加えた。

ベン・サス上院議員(ネブラスカ州選出)も同様に、「18世紀のような、いかれた保護主義は、米国の家族の生活費を押し上げる」とコメントした。

米国家通商会議のピーター・ナバロ委員長はCNNテレビに対し、多数の共和党議員が追加関税を批判していることについて、2016年の大統領選を引き合いに、「ご存知の通り、彼(トランプ氏)はみんなに勝っている」と語り、共和党議員たちは「経済について完全に間違っている」と付け加えた。

米自動車部品工業会(MEMA)など業界団体は、追加関税に深い懸念を表明している。

EUの反応

欧州製鉄鋼・アルミニウム製品への追加関税を受けて、リーバイ・ストラウス社ジーンズやバーボンなどの米製品に、25%の関税が課される可能性がある。

EUのセシリア・マルムストローム欧州委員(通商担当)はBBCに対し、「報復措置を検討している。つまり、我々も欧州連合への米国の輸出品に税あるいは関税を課す」と語った。

このほかの貿易相手国の反応

カナダ首相府は、ジャスティン・トルドー首相が5日にトランプ大統領と電話会談した際に、同国産業を「強く擁護した」と述べた。首相府報道官は、会談は「建設的」だったとしたが、詳細は明らかにしなかった。カナダは米国による追加関税が両国に混乱を生じさせると警告している。

英首相官邸は、テリーザ・メイ首相が4日のトランプ大統領との電話会談で、「鉄鋼・アルミニウム製品への関税方針に関する大統領の発表に対する我々の深い懸念」を表明したと明らかにし、「世界的な過剰生産能力の問題を解決するためには、多国間での対応がすべての関係者の利益になる」と指摘したと述べた。

張業遂・全人代報道官は、昨年には米中間の貿易規模が5800億ドルを越えており、両国間に「一定の摩擦が生じる」のは自然なことだと語った。一方で、中国の利益が損なわれるのであれば、「必要な措置をとる」とも述べた。

ジャンクロード・ユンケル委員長は、約35億ドルに上る米国からの輸入品に25%の関税を課し、ジーンズやバーボン、米ハーレー・ダビッドソンの二輪車など、米国を代表する製品を標的にする可能性があると語った。

ブラジルやメキシコ、日本も報復措置を検討するとしている。

国際通貨基金(IMF)も、米国の方針を激しく批判している。

貿易赤字に関するトランプ氏の主張は正しいのか

米国は100カ国以上から鉄鋼製品を輸入しており、輸入は輸出の4倍に達している。2000年以降、米鉄鋼産業の生産や雇用者数は急速に減少した。

米国は、EU製自動車の最大の輸入国で、2016年には、EUが輸出した1920億ユーロ(約25.1兆円)相当の自動車の25%が米国向けだった。第2位の中国向けは16%だった。

(英語記事 Republicans 'extremely worried' by Trump's metal tariffs plan