上念司(経済評論家)

 今から5年前に出版されたエドワード・ルトワックの『自滅する中国』(芙蓉書房出版)はまさに予言の書だった。

 ルトワックいわく、中国は外交も戦争も「孫子の兵法」を重視するあまり、現代におけるヨーロッパ的な価値観外交に適応できない。「孫子の兵法」の本質は「兵は詭道なり」である。簡単に言えば、「だまされた奴が悪い」ということだ。勝つためにはどんな嘘もペテンもまかり通る。だから、国際法は自分の都合のいいように解釈するか、正面切って破るかのいずれかだ。文句を言ってくる国に対しては、経済や軍事、あらゆる手段を使って恫喝する。

記者会見でマクロン仏大統領(左)と握手する中国の習近平国家主席=2018年1月
記者会見でマクロン仏大統領(左)と握手する中国の習近平国家主席=2018年1月
 そんな世界観が欧米的な価値観と相いれるはずはない。そもそも、中国大陸においてヨーロッパのような分裂国家の集合体であった時代は短い。中国大陸において対等の力を持った国が競い合っていたのは春秋戦国時代ぐらいのもので、それ以降は統一王朝という名の独裁政権が支配している。しかも、その政権の多くが異民族の侵略によって成立した王朝であり、漢民族は被支配民として歴史の大半を過ごしていた。

 だから、歴史的に中国は同等な付き合い方を知らない。いまでも、南モンゴル、ウイグル、チベットに対しても、粛清と民族浄化という形でしか接することができない。世界には皇帝と奴隷しか存在しないとでも言うのだろうか。ハッキリ言って迷惑な話だ。

 しかし、そんな乱暴者は嫌われる。ルトワックは5年前の段階で、中国の孤立を予想していた。中国が暴れまわることで、かえって周辺諸国が結束するからだ。具体的に言えば、東南アジア諸国連合(ASEAN)諸国が結束し、台湾の独立派が勢いづき、日本とインド、オーストラリアには事実上の軍事同盟が成立するといった反応が考えられる。もちろん、そこにアメリカも加わるだろう。これらの国々に包囲されたらさすがの中国もひとたまりもない。

 そこで、中国共産党は自分たちがいくら暴走しても各国が連携しないよう、世界中にパンダハガー(親中派)を育ててきた。彼らは「中国は経済成長すればいつか必ず民主主義になる」という不思議な理論を唱え、とにかく中国を儲けさせてやることが大切だと言わされた。いや、自ら進んで言ったのかもしれない。弱みを握られたのか、利権で釣られたのか理由は不明だ。