この第一の可能性の有無については、確認するのは極めて簡単だ。近畿財務局側から大阪地検に任意提出されている決裁文書の「原本」と突き合わせば、国会議員に提出された決裁文書の「写し」が、「原本」と内容が異なるものかどうか一目瞭然だ。

 この場合、「写し」の書き換えであっても、有印公文書変造・同行使の犯罪に当たる。判例で、「公文書偽造罪は、公文書に対する公共的信用を保護法益とし、公文書が証明手段としてもつ社会的機能を保護し、社会生活の安定を図ろうとするものであるから、公文書偽造罪の客体となる文書は、これを原本たる公文書そのものに限る根拠はなく、たとえ原本の写であつても、原本と同一の意識内容を保有し、証明文書としてこれと同様の社会的機能と信用性を有するものと認められる限り、これに含まれるものと解するのが相当」とされているので(最判昭和51年4月30日)、決裁文書の写しが書き換えされて国会議員に提出されたとすれば、有印公文書変造の重大な犯罪が成立することになる。

国会議員らに開示された、森友学園との国有地取引に際して
財務省が作成した決裁文書(画像の一部を処理しています
国会議員らに開示された、森友学園との国有地取引に際して 財務省が作成した決裁文書(画像の一部を処理しています
 決裁文書の「原本」は、当該行政行為を行った財務省が、責任を持って保管すべき公文書であり、国会議員に提出した資料について、それが原本と異なるのではないかとの疑いが持たれているのであれば、その「原本」を示して、「写し」が「原本」と相違ないことを明らかにするのは行政官庁として当然の義務だ。

 決裁文書の「原本」が検察官に任意提出されていて財務省側の手元にないとしても、それが、「捜索」ではなく、「任意提出」によって検察の管理下にあるのであれば、あくまで「任意」の提出なのであるから、財務省側で、その提出した文書自体を使用する必要が生じたとして検察官に要請して、一旦返還をしてもらうことができる。捜索差押ではなく、任意提出という手段をとったということであれば、検察官としては、その内容を、提出者の財務局側に秘匿しておく必要があるとは判断していないということだからだ。検察としても、返還に支障があるとは思えないし、少なくとも、任意提出者の財務局に文書の写しをとらせることは捜査の支障となるものではない。その結果、決裁文書「原本」と、開示した決裁文書原本の「写し」が同一であることが確認できれば、少なくとも、第一の可能性は否定できるのである。財務省側で検察と交渉し、その点を明らかにすることは、行政文書原本の管理者である財務省当局の当然の義務と言うべきであろう。

 そこで、仮に、第一の公文書原本の「写し」の書き換えの可能性が否定された場合、第二の可能性として問題となるのが、公文書として財務省が管理しておくべき決裁文書「原本」そのものが、最終的に現在の内容になるまでの間に、書き換えられた可能性だ。いずれかの段階で、現在大阪地検に任意提出されている「原本」と言われている文書とは異なる内容の「本当の原本」が存在していたが、政府答弁に整合する内容に書き換えられ、それが国会議員に提出されたという可能性だ。この場合、国会議員に開示された決裁文書は、現在の正式な決裁文書とは異ならないことになる。