大メディアの幹部からテレビタレントまで、安倍晋三首相の会食相手はバラエティ豊富だが、最近の“お気に入り”は自民党の若手議員たちだという。総理大臣自ら、若手に議員としての心構えを説く──というと聞こえはいいが、その会食の“中身”を取材すると、看板政策の行き詰まりに苛立ちを隠しきれない首相のストレスのはけ口に使われているというお寒い実態が浮かび上がってきた。
「働き方改革」の論戦が続く衆院予算委員会で、打ち合わせする麻生太郎副総理兼財務相(右)と加藤勝信厚生労働相。左は安倍晋三首相 =2018年2月22日(斎藤良雄撮影)
「働き方改革」の論戦が続く衆院予算委員会で、打ち合わせする麻生太郎副総理兼財務相(右)と加藤勝信厚生労働相。左は安倍晋三首相 =2018年2月22日(斎藤良雄撮影)
 最近首相は「裁量労働制」に関する国会答弁で厚労省のあまりにも杜撰なデータに苛立ちを隠しきれず、ストレスを感じていると指摘する声もある。自民党細田派のベテランはこう心配する。

「安倍さんはこれまで萩生田光一(幹事長代行)、世耕弘成(経産相)、加藤勝信(厚労相)ら気の許せる側近たちを官邸に置いていた。彼らは何か問題が起きると“総理、大丈夫です”“素晴らしい答弁でした”と励ますのがうまく、総理のストレスを緩和する精神安定剤の役割を果たしていた。

 ところが、そうした側近たちが出世して大臣や党幹部になり、官邸から“卒業”してしまった。加藤厚労相に至っては捏造問題の対応で総理に“あいつは頼りにならない”といわれ、逆にストレスの種になっている」

 そんな安倍首相にとって新たな精神安定剤になっているのが、自民党の「魔の3回生」との食事会だ。

 この2月から首相は自民党1~3回生の若手議員を公邸に招いて懇親会をスタートさせた。当選1回の新人から順に公邸に招き、3回生との懇親会は2月13日から行なわれた。

◆「5年前はカレーだった」

 安倍首相は“魔の3回生”を前にするとつい口が軽くなる。

「君たちくれぐれも秘書は大切にしてくれよ。秘書とのトラブルで人生を台無しにする人もいるんだから」

 公邸での懇親会は長テーブルの上座に首相、その隣に進行役の西村康稔・官房副長官が座り、約20人の3回生がズラリと並んでいた。

 彼らのほとんどは安倍氏が先頭に立って民主党から政権を奪還した2012年の総選挙で初当選した「安倍チルドレン」だ。高い内閣支持率を背景に風に乗って当選を重ね、選挙の苦労を知らないだけにスキャンダルが絶えない。同期にはゲス不倫の宮崎謙介氏や「このハゲー!」発言の豊田真由子氏ら議席を失った者もいる。

 首相も国会と違って彼らの前では元気になる。13日の懇親会は平昌五輪の開会式から帰国したばかりとあって、首相のスピーチは朝鮮半島情勢の話から始まった。

「(北朝鮮への対応は)米国と緊密に連携することが大事だ。拉致問題を含めてしっかり対応していく」

 憲法改正の話にはとくに熱がこもった。

「あなた方は憲法改正が国会で議論になる時代に議員になった。その責任を負っているということをよく自覚していただきたい」