舛添要一(前東京都知事、元厚生労働相)

 学校法人「森友学園」(大阪市)の国有地売却をめぐる文書改竄(かいざん)疑惑で国会が空転している。混乱が続く中、売却交渉に関与した近畿財務局の男性職員が自殺していたことが、9日になって明らかになった。そしてこの日、森友問題が発覚した当時、財務省理財局長であった佐川宣寿(のぶひさ)国税庁長官が辞任した。

2018年3月9日夜、政府の持ち回り閣議で辞任が決まり、
財務大臣室へ向かう佐川宣寿国税庁長官
 同日夜、麻生太郎財務大臣は記者会見し、佐川長官の辞任理由と経緯について説明した。国税庁長官はほぼ1年で交代するのが慣例であるが、佐川氏は昨年7月5日に就任し、まだ8カ月しかたっていない。佐川氏は長官就任時も記者会見を行わず「疑惑隠し」と批判されたが、麻生氏は「適材適所」の人事であることを強調し、彼をかばい続けた。

 朝日新聞が報道したように、一連の問題をめぐる財務省の決裁文書が書き換えられたのかどうか、これまでに財務省が国会に提出した資料だけでは不明である。しかし、もし公文書を改竄したとなると、それは財務省全体の問題であり、財務大臣の責任問題に発展することは避けられない。

 私は厚生労働大臣のとき、年金記録、薬害肝炎、新型インフルエンザなどの諸問題の対応に追われた。年金や薬害の資料管理のずさんさには閉口したが、それは過去の責任者の怠慢から来る問題であり、外部の力も借りてデータの訂正や再生に努力し、問題解決にまでこじつけた。

 新型インフルエンザについては私の在任中に発生した。それだけに、もしウイルスの特性や患者の症状に関するデータが改竄されるようなことがあれば、国民の命に関わることであり、私は辞任の余儀なきに至ったであろう。そこで、私は外部の医者や研究者の助力を仰ぎ、厚労省技官(医療や薬の専門家)の説明の真偽を必ず確かめることにしたのである。それでも、医者ではない私をだまそうとする技官がいて、苦笑したものである。

 今回の財務省の一件が朝日新聞の報道通りであるとするならば、厚労省のように大臣をだまそうというのではなく、政権や首相の意向を「忖度(そんたく)」して役人が動き、文書が改竄されたという意味で異質である。

 要するに、長期政権の悪弊が出てきているということだ。いずれにしても、国民が被害者であって悪質極まりない。財務大臣が辞任して責任を取るのが筋である。国権の最高機関である国会で、政府が虚偽の文書を提出して許されるはずはない。

 また、国会において、理財局長時代の佐川氏が虚偽の答弁をしていたのならば、その責任を取ってもらわねばならない。それは国税庁長官の職を辞したことで免責になるわけではない。その点は、麻生氏も会見で強調している。