ある問題が政局になったとき、政治的解決法の定石は誰かの首を飛ばすことである。しかし、その手法で問題が解決しそうにないのが、今回のケースだろう。これは、いわば「トカゲの尻尾切り」で、尻尾は佐川氏であり、麻生氏である。むろん、トカゲは安倍晋三首相である。佐川氏に責任を負わせ、財務省内に問題を閉じ込め、内閣全体に責任が及ばないようにする、いわば分離方式解決法である。財務省を悪者にして、首相にまで責任が及ばないようにするのである。

 たとえそれが成功しても、安倍首相には麻生氏を任命した責任が残る。しかし今のところ、任命責任という理由で、首相が辞任する事態には容易には発展しないであろう。

 だが、今後の世論の動向、与野党の駆け引き次第では、安倍内閣の命運にもかかわってくる。私は、安倍、福田、麻生の三首相に閣僚として仕えたが、第一次安倍内閣は首相の病気で崩壊し、福田内閣はねじれ国会への対応の困難さから行き詰まり、麻生内閣は総選挙の敗北で政権交代となった。いずれの内閣でも厳しい国会運営を迫られたが、特に世論の反応に一喜一憂したものである。

2018年3月9日、厳しい表情で首相官邸を出る安倍首相
 私は、参議院を仕切ってきた青木幹雄元参院議員会長から、内閣の命運は世論の支持と党内の支持という二つの要因で決まると教えられた。世論調査の支持率が少し下がっても、党内をしっかり掌握していれば、政権は維持できる。これは5年の長期となった第二次安倍内閣が好例である。総裁選の地方党員票で石破茂元幹事長に負けても、国会議員票で勝ったことでも明らかだ。

 逆に党内で反対派が強くても、世論調査の支持率が高ければ政権は維持できる。この後者の典型が小泉純一郎内閣だった。

 それでは、安倍首相が直面している現在の状況はどうであろうか、またどう推移することが予想されるであろうか。安倍内閣は、財務省のみならず厚労省のデータ問題も抱えており、世論は政府に対して極めて批判的である。いま世論調査をすれば、内閣支持率は下がっても上がることはまずないであろう。

 そして今週末、国会議員の多くは地元に帰る。選挙区では、今回の件について、支持者も含め有権者から様々な批判が展開されるであろう。その世論の「空気」が自民党議員から週明けに永田町に持ち込まれる。党内の意見も、安倍内閣全体に対して厳しいものとなっていくであろう。

 今年9月には自民党総裁選が行われる。「安倍一強」で首相への支持は盤石であると考えられてきた。しかし、今回の財務省の文書改竄疑惑、そして自ら今国会の最大課題としてきた「働き方改革」の頓挫は、世論のみならず、党内的にも安倍首相の求心力を急速に弱めていくものと予想される。

 額賀派のお家騒動をはじめ、自民党の各派閥の動きも活発になってきている。「政界、一寸先は闇」と言われる状況が現実化してきている。