山田順(ジャーナリスト)

 財務省が学校法人「森友学園」(大阪市)の国有地売却をめぐる文書の「書き換え」を認めたことで、政界は大騒ぎになっている。特に野党は「本当だったら内閣が飛ぶ問題」などと言ってきた手前、得意満面になって政局にしようとしている。ここで倒閣を決めれば、それはそれで「大手柄」だからだ。

 しかし、これまで一度たりとも自分たちで相撲を取らず、メディア報道に乗っかって政府を追及してきただけの「卑しい」集団が手柄を自慢しても、国民はシラケるだけである。しかもこの件で、もし「安倍一強」が崩れ、新内閣が誕生したとしても、この問題が解決するわけではない。財務大臣のクビが飛ぼうが、内閣が替わろうが、それではこの問題は解決しない。

 なぜなら、これは財務省に限らず、「ガラパゴス日本」のほとんどの組織が持つ「風土病」の最悪の症状だからだ。なにしろ、自殺者まで出してしまっている。したがって、この病気を今ここで撲滅しないと、日本は大変なことになってしまうだろう。人心は乱れ、デモクラシー(民主主義)は崩壊してしまうだろう。

 今回明らかになったのは、単なる公文書偽造という犯罪だけではない。その向こう側に、それを実行した人々の、人間としての倫理観、モラルの喪失という、もっと大きな問題が横たわっている。

 もし、この問題に何も手をつけず、単に政局で終わらせれば、日本の「風土病」はさらに悪化する。したがって、与野党ともに協力して、国会でこの問題を十分に討議し、日本を大改革しなければならない。これが本筋であろう。
財務省理財局の決裁文書改ざんを巡る野党の合同ヒアリング=2018年3月12日、国会
財務省理財局の決裁文書改ざんを巡る野党の合同ヒアリング=2018年3月12日、国会
 では、佐川宣寿(のぶひさ)前国税庁長官に国会で嘘をつかせ、官僚たちに公文書偽造という組織犯罪まで手を染めさせてしまった「風土病」とは何だろうか。それは、もはや完全に時代遅れと化した官僚組織の「終身雇用・年功序列」システムである。この延長上に「天下り・わたり」があり、このガラパゴスシステムは完結することになっている。

 考えてみてほしい。なぜ佐川氏は国会(国民の前)で嘘をつかねばならなかったのか。なぜ財務省という官庁の中の官庁に務めるエリートたちが、公文書を書き換えなければならなかったのか。エリートだから、公文書偽造が犯罪であることは当然知っている。それでも、なぜ彼らはそうしたのか。彼らには初めから倫理観もモラルもないのか。そうではあるまい。

 佐川氏は、子供のころから勉学に励み、東京の進学校に進んで受験競争を勝ち抜き、東大から大蔵省(当時)というエリートコースに乗った。同級生らを取材した記者によると、「本当にまじめで正直な学生」だったという。東大での専攻は農業経済であり、志を持って官僚になったという。