つまり、「終身雇用・年功序列」は、企業が永遠に成長し続けるということが前提になっている。したがって、この制度が最も機能していたのは、日本が成長を続けていた1990年ごろまでであり、その後は徐々に崩れていった。バブル崩壊以後の「失われた10年」「失われた20年」で、もはや制度維持が困難になった。

 その間、非正規雇用が増え、「窓際族」が生まれ、リストラが起こった。しかし、いまだに新入社員を新卒一括採用して正社員にしている企業では、このシステムが機能している。その結果、偽装事件のような不祥事が続くのである。

 民間で徐々に機能しなくなった「終身雇用・年功序列」システムでも、官僚組織では生き残った。なぜなら、官庁は税金によって運営されているからである。そんな組織は雇用調整する必要などさらさらない。また、予算さえつけば、無駄な事業がやり放題だからだ。

 しかも、安倍内閣になってからは、アベノミクスによる異次元緩和が始まった。政府にカネがなければ、日銀がいくらでも国債を買ってくれるのだから、もはや倫理もモラルもなくなってしまった。今や官僚も政治家も「逃げ切り」ができればいいのだ。

 このような地に堕ちた倫理とモラルを回復させるのは、日本の中枢である官庁の「終身雇用・年功序列」システムを廃止することが不可避である。年功序列を廃止すれば「天下り・わたり」の必要もなくなる。年次による昇進・昇給をやめて能力給・成果給にすれば、年齢差別はなくなり、30代で局長になる人間も出れば、50代を待たずにリタイアする人間も出る。また、アメリカのように外部からの人材登用も可能になるだろう。

 そうして、国民に対していい仕事をした人間には、高額な給料を払えばいいのである。なぜ最も仕事をしている30代、40代のエリート官僚が民間の成長企業より安い給料に甘んじなければならないのか。場合によっては、シンガポールのエリート官僚のように、年俸1億円を払ってもいいではないか。

 皮肉なことに、今国会の最大のテーマは「働き方改革」である。野党が葬り去った「裁量労働制の拡大」はともかく、各種法案の目指す方向は「同一労働同一賃金」の実現である。同じ仕事をしている人間に、同じ賃金を支払うのは当然なのに、日本では「終身雇用・年功序列」システムのために、これが非常識とされてきた。男女の賃金格差も大きい。これほどの差別はない。
2018年3月8日、質問者の野党議員が欠席し、時間だけが過ぎていく参院予算委。左から安倍首相、麻生財務相、河野外相、小野寺防衛相
2018年3月8日、質問者の野党議員が欠席し、時間だけが過ぎていく参院予算委。左から安倍首相、麻生財務相、河野外相、小野寺防衛相
 安倍晋三首相は昨年、佐川氏の国税庁長官人事を「適材適所の人事」と言った。この言葉通りの人事を本当に実行するなら、財務省ほかすべての省庁、そして政党人事、政府の閣僚人事から、真っ先に「終身雇用・年功序列」を廃すべきだろう。

 もし、野党もこの国から虚偽答弁や偽装をなくしたい、公正で差別のない国にしたいと本当に願うなら、まずは官僚の「終身雇用・年功序列」システムをなくす法案をつくるべきだろう。働き方をより自由にする法案をつくり、まず官庁にそれを適用させるべきだ。

 安倍首相は「戦後レジームからの脱却」をテーマに掲げている。ならば、まず世界ではありえない「ガラパゴス労働制度」を廃止して、働く人間が差別されないシステムを日本中に導入すべきである。