杉江義浩(ジャーナリスト)

 学校法人「森友学園」への国有地売却をめぐって、事前の価格交渉を否定する答弁を繰り返し、交渉記録についても「廃棄した」と主張していた財務省が、3月12日ついに記録文書に書き換えがあったことを認めました。これによって、森友問題への関与を否定し続けてきた安倍政権は、致命的な局面に追い詰められた、と言えるのではないでしょうか。

 3月2日『朝日新聞と安倍晋三の一騎打ち』という言葉が、報道関係者の間で飛び交いました。朝日新聞が、財務省の当時の決裁文書に「学園の提案に応じて鑑定評価を行い」「価格提示を行う」などの記載があり、書き換えられた疑いがある、と衝撃のスクープをしたからです。

 これが真実だと判明したことで、「書き換えはない」としてきた安倍政権を窮地に立たせることになります。一方で、ネトウヨたちは、また朝日新聞の捏造(ねつぞう)だろう、証拠を示せ、などと息巻いていましたが、私は、朝日新聞は大きな勝負に出たな、と感じていました。官僚を味方に付けなければならないからです。今の官僚はトップの人事権を首相官邸が握っているので、安倍首相がその気になれば真実をもみ消せるかもしれない、という懸念も抱いていました。

 私の取材経験によると、官僚というか、お役所というところは、何でも文書にして改変を許さず、やたら記録してため込む人種の集まり、という印象がありました。書類を作るのにも鉛筆書きはだめでボールペンに限る、修正は二重線にして押印する、といった習慣があります。ですから文書がさっぱり消えてなくなる、なんてことはあるはずがない、と感じていました。

 では3月2日の段階で、なぜ朝日新聞という一介のマスメディアが、一国の首相と『一騎打ち』という状態だったのか。もちろん朝日新聞以外のすべてのメディアが、この森友問題に決定打となる証拠をまだ入手していなかったからですが、私はそこにマスメディアがマスメディアである本質、国家権力と向かい合う時のダイナミズムを垣間見た気がします。
朝日新聞東京本社=東京都中央区(産経新聞チャーターヘリから、桐原正道撮影)
朝日新聞東京本社=東京都中央区(産経新聞チャーターヘリから、桐原正道撮影)
 マスメディアにはいかなる権力からの圧力にも屈せず真実を追求し、庶民の目となり耳となり、国家権力の暴走を防ぐ監視役となる、重要な任務があります。しかし、その前提として、自社の綿密な取材に基づき、事実を検証可能な根拠とともに正確に把握し、正しい情報を発信するという基本が守られなければなりません。特に今回のように、時の政権の存続を左右する重要な問題の場合、慎重を極めた事実確認が要求されます。